埼玉新聞

 

人気のアマビエやヨゲンノトリを紹介 ふじみ野で伝染病を乗り越える企画展【#コロナとどう暮らす】

  • 大井郷土資料館で開かれている企画展「伝染病を予言する妖怪たち~人と病気の歴史」=ふじみ野市大井中央

 日本人はどんな伝染病に苦しみ、どのように乗り越えたのか。新型コロナウイルス感染症の収束に目途が立たない中、「アマビエ」など伝染病を予言した江戸時代の妖怪や幕府の対応など伝染病と日本人の歴史をひもとく文献や妖怪グッズなどを紹介した企画展「伝染病を予言する妖怪たち~人と病気の歴史」が、ふじみ野市立大井郷土資料館で開かれている。

 日本人と伝染病の歴史について理解を深め、ソーシャルディスタンスなどの新たな日常を求められるコロナ禍の時代を乗り越えてもらうのが狙い。

 同展は江戸時代から地元の神社で行われている祇園精舎の守護神「牛頭天王」を祭った夏祭りに使用したみこしや獅子頭、神楽面など計約50点を展示した季節展「天王様~地域の祇園祭~」と同時開催されている。いずれの展示会も7月6日まで。入場無料。

 「伝染病を予言する妖怪たち」は、江戸時代から明治にかけて、流行した伝染病とそれを予言した「アマビエ」「ヨゲンノトリ」「くだん」の3妖怪などを写真とパネルで紹介。ガラスケースには、明治時代の種痘をしていない児童らの記録帳や妖怪のキーホルダーなどが展示されている。

 江戸時代には疱瘡(天然痘)をはじめ麻疹や赤痢、コレラ、結核、ペストなどの伝染病が流行。川越藩ではコレラが流行した際、川越氷川神社で感染防止を祈願したり、疱瘡が流行した際はワクチン「種痘」の接種が行われていた。市内の長宮氷川神社の境内には疱瘡神社が祭られている。

 伝染病を予言した妖怪については「海から姿を現したアマビエが病気が流行するので、早く私の姿を描いて人々に見せるように役人に伝言し、海に戻った」などと江戸時代の瓦版(京大図書館所蔵)に記述されていることや牛の体に人の顔を持つ「くだん」を写真と共に紹介している。

 また、江戸時代に山梨県の名主の日記に記述された黒い体に白と黒の二つの頭を持つ鳥「ヨゲンノトリ」を紹介。「石川県の山にこの鳥が現れ、今年8月と9月に世の中の9割の人が亡くなる難がある。私の姿を朝夕に拝め信じるものは難を逃れられると予言した」と記載されている。

 同資料館は「江戸時代は予防接種と神社での祈願などを同時に行っており、今のコロナ禍でもワクチンの開発に取り組む一方、伝染病を予言する妖怪に人気が集まっている。日本人の心に大きな変化はなく、おおらかな気持ちを持てば、難局も乗り越えられるかもしれない」と話している。

 問い合わせは、同資料館(電話049・263・3111)へ。

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