埼玉新聞

 

浦和の若武者2人、その素顔に迫る MF柴戸海とDF荻原拓也 プロ1年目に天皇杯Vつかむ

  • (左)MF柴戸海、(右)DF荻原拓也

 プロ1年目のルーキーでありながら、日本有数のビッグクラブ・浦和レッズで輝きを放ったMF柴戸海(23)とDF荻原拓也(19)。同期入団の2人がそろってリーグ初先発を飾った昨年のJ1リーグ最終節のFC東京戦では、ドリブルを仕掛けた荻原が倒されてFKを獲得し、素早いリスタートから柴戸が勝ち越しのダイビングヘッド。チームを勢いづけ、12大会ぶりの天皇杯制覇にも貢献した。2019年シーズンの活躍が楽しみな若武者2人の素顔に迫った。

 ―2018年シーズンの自己採点を。

 柴戸(以下、柴)「50点。けが(春先に半膜様筋損傷で全治4週間)をしてうまくいかない中で自分と向き合い、リーグ終盤で試合に絡めるようになった部分は評価できる。自信にもなったが、まだまだ出場時間が短く先発も少なかった」

 荻原(以下、荻)「自分も50点以下。50点ぐらい。シーズンの序盤にデビューすることができたが、出場した試合は課題がたくさんあった」

 ―18年を漢字一文字で表すと。

 柴「生きるの『生』。素晴らしい選手たちとポジションを争い、悔しい思いをしながらも、サッカー選手として生きていると感じた。けがをして苦しんだ時も、自分が活躍するために何ができるのか考え続け、生きていることを実感した1年間だった」

 荻「『前』がいい。とにかく仕掛ける姿勢、プレーでも前への推進力を発揮できた。常に前向きに考えるようにした」

 ―プロ1年目から公式戦に出場したことで、見えた課題や収穫は。

 荻「自分のストロングポイント、ドリブルやスピードは通用した。そこを発揮するための工夫が大事になってくる」

 柴「大卒で1年目から活躍しなければ先はないと思っていた。けがで焦りもあったが、自分と向き合う時間ができた。けががなかったら今の自分はない。自分の長所である運動量や球際の強さでは、通用する部分も多くあった」

 ―最も印象に残っている試合。

 柴「埼スタデビューしたリーグ神戸戦。多くのお客さん(5万5689人)が入っていて、なかなか味わえない雰囲気を味わえて、そこから試合に出られるようになった。多くの方に知ってもらえた」

 荻「ホームでのリーグ磐田戦(8月15日)。残り4分で試合に出てファブリシオ選手のゴールをアシストした。なかなか試合に出られない中、少ない時間で結果を出せた。交代で使われる機会が増え、信頼を勝ち取る分岐点になった」

 ―プロの世界ですごいと感じた選手は。

 柴「僕は(興梠)慎三さん。レベルが違う。一番は体の使い方。絶対取られない位置にボールを置いて、体の向きのよさから数々のゴールを決めている。別格」

 荻「槙野選手。天皇杯決勝の前日から体調を崩していた。当日の朝まで厳しそうだったが、夜の試合でフル出場して勝利に貢献した。これがプロなんだと尊敬した」

 ―昨季は3人の監督が指揮を執ったが、印象に残っている言葉を。

 柴「大槻さんのポジティブな言葉が印象に残っている。おまえならやれるよ、もっとできるだろ、とか」

 荻「大槻さん。昔から言われてるんですけれど、期待し過ぎかなぁ、もっとできるでしょって。期待してくれることはすごくありがたい。それに応えたい」

 ―天皇杯で優勝した。

 荻「プロ1年目でタイトルを取れるのはすごいこと。皆からうらやましがられて、本当に素晴らしいことだと実感した」

 柴「このメンバーで戦ってタイトルを取れた。そのピッチに立てたことはうれしかった」

 ―互いの印象。

 荻「(柴戸)海君はめっちゃ真面目でおとなしい印象だった。ふたを開けたらやんちゃ。今は見る目が変わってしまった。めっちゃ優しい」

 柴「オギは変わっていると言われていたけれど、意外としっかりしているというか、自分を持っている。いろんな考えを持っていて、自分の言葉で伝えようとしている」

 ―互いにすごいと感じる部分は。

 柴「18歳、高卒1年目のキャンプで活躍(練習試合で得点王)した。自分が18歳の時を思い返し、すごいと思った」

 荻「THE・努力家。地味なことをコツコツできるタイプ。それが最後は結果に出ることを証明した。自分も謙虚にやらなきゃいけないタイプなので、見習いたい」

 ―シーズンオフの期間にやりたいこと。

 柴「(11月22日に一般女性と入籍)今は寮なので、今年は一緒に住もうかと。家を探したり、新婚旅行に行けたら。候補は出ていて、いろんなところを回りたい」

 荻「ユースの時からオフの日もストイックに体を動かしていたので、1週間とか長い単位でサッカーから一度離れ、自然豊かな所に行ってみたい」

 ―シーズン中の短いオフの使い方は。

 柴「寝ちゃう(笑)。気づいたら時間がたっている。最近は携帯で映画が見られる。ジャンルは海外のアクション系が好き。あとはお笑い」

 荻「寮で何もしていない時間はつくらないように意識している。頻繁に髪を切ったり、ゆっくりするときは実家で」

 ―体調管理の意識は変わったか。

 荻「体にいいと言われるものはとりあえずやってみる。試合前の準備を怠ると不安になってしまうので、これだけやったという自信を持って試合に臨むと、言い訳ができない。そこで初めて反省ができる」

 柴「ハードな練習が続いているので、いい睡眠を取れるように、寝る前に携帯やテレビを見ないようになった」

 ―浦和だからこそ見える世界がある。

 荻「普段の練習だけでもレベルが高い。試合に出て相手と対面したとき、怖さはないなと思えるぐらいチームのレベルが高い。試合に絡むことができて、同い年の橋岡が自分よりも試合に出ているので、刺激し合える環境がつくれている」

 柴「ファン・サポーターの声援を外から見る立場だった。実際にピッチに立つと鳥肌が立ち、身震いするものがあった。レッズに入ろうと思った要因の一つで、浦和のファン・サポーターは間違いなく日本一。5万人超えの埼スタでプレーできたことは大きな財産」

 ―今年の抱負、目標。

 荻「スタメン定着。今年が勝負の年だと思っている。1年目から試合に出て見つけた課題が伸びしろ。今年は飛躍の年にしたい。U―20(20歳以下)ワールドカップ(W杯)に出るためにも、とにかくチームで試合に出ることが大事」

 柴「レギュラーを取りたい。リーグ終盤で試合経験を積んで、自信も出てきた。今年につなげたい思いはある。昨年の終盤で出たからといって出られる保証もない。もっとやらなければいけないことがある。積み上げがあるとはいえ、一からのスタート。競争に勝っていきたい」

■DF荻原拓也(おぎわら・たくや)

 2018年にユースからトップチーム昇格。キャンプで抜群の存在感を発揮し、プロデビューを飾った3月7日のYBCルヴァン・カップ1次リーグ名古屋戦で2得点。主戦場の左サイドでDF、MF両方をこなす。躍動感あふれるドリブルと、高精度の左足キックが最大の武器。リーグ8試合に出場。川越市出身。19歳。

■MF柴戸海(しばと・かい)

 2018年に明大から加入。広い視野とパスセンスを備え、球際の強さとセカンドボールへの反応は一級品。序盤はけがで出遅れたが、オリベイラ監督の信頼を勝ち取った終盤は交代枠の1人目として重用された。リーグ9試合に出場し、初先発した最終節のFC東京戦でプロ初ゴール。横浜市出身。市船橋高―明大出。23歳。

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