埼玉新聞

 

<新型コロナ>第2波を察知、早期対応へ 感染症流行の予兆捉えるか…下水に含まれるウイルス量を測定

  • 流入下水のサンプルを採取する職員=10日午前、戸田市笹目の荒川水循環センター

  • 下水サンプルを採取するため設置された機器

 下水に含まれる新型コロナウイルスの量を測定し、感染症流行の予兆を察知しようとする取り組みが県内で始まった。生活排水の中には無症状の人から排出されたウイルスが含まれることも想定されるとして、定期的に分析を続けていく。ウイルスがどの程度含まれるかは現時点で明らかになっていないが、ウイルス発見の状況によっては「第2波への早期対応にもつなげられる」と期待が寄せられている。

 調査を行うのは国公立大学や国、研究者らで組織された「日本水環境学会COVID―19タスクフォース」。

 県は同学会の構成員である東京大学から依頼を受け、県下水道公社が県内9カ所の水循環センターのうち5カ所で、トイレや台所、家庭などから排出された流入下水を採取。冷凍保存し、サンプルとして同大に送っている。

 戸田市笹目の「荒川水循環センター」は、さいたま、川口、上尾、蕨、戸田各市の計約200万人の生活排水を集めて処理し、荒川に放水している。ウイルスの分析作業に当たり、流入する下水を自動で採水する機械を設置し、毎週水曜日の午前9時前後にサンプル300ミリリットルを採取する。職員が手作業で行う際はバケツに下水をくみ、容器に注ぎ入れる。作業時は手袋やゴーグル着用などの感染防護策を取って実施しているという。

 下水を調べることで感染症流行の予兆を知る手法は、食中毒を引き起こすことで知られるノロイウルスでは既に一定程度、確立している技術とされる。ウイルスの量が増えた場合、流行拡大の兆候と捉えることができるという。

 ただし新型コロナウイルスについては現時点で結果が出ておらず、今回の取り組みから有効な結果が出されるか、流行の予兆を捉えることができるかどうかが注目される。

 県下水道事業課の若公崇敏課長(43)は「調査によって新型コロナウイルス感染の第2波の兆候が捉えられれば、感染防止対策に有効となる」と説明。「積極的に資料を提供し感染拡大防止に協力したい」と話している。

 この取り組みでは埼玉のほか、東京都、横浜市、川崎市など20以上の自治体が資料提供に協力している。

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