埼玉新聞

 

<もっとさいたまにスポーツを6>生まれ変わるブロンコス サッカーに続くバスケ文化広げる新アリーナ必要

  • 池田純氏

 新生埼玉ブロンコスの4選手と来季の契約を結んだ。4人とも、クラブの経営を理解し、地域のこともバスケットボールの普及も考え、選手と二足のわらじで力になってくれる最初のメンバーだ。ブロンコスは生まれ変わり、7月に新たなスタートを切る。埼玉の人たちは高見の見物でなく、自分事としてとらえ、一緒に育てていってほしい。

 来年は東京オリンピック・パラリンピックが開催され、さいたま市でバスケットボールが行われる。万が一、中止になっても、さいたま市は2020年にオリンピックのバスケットボール競技が来るはずだった地であり、多くの人がバスケに触れ、地域が元気になるチャンスだった事実は変わらない。だからこそ私たちは運営会社の名称を「ブロンコス20」に変更した。

 さいたま市と所沢市をダブルホームタウンとし、深谷市と春日部市でも拠点づくりを進めている。根底にはバスケというスポーツの力を使い、地域活性化に役立てたいという思いがある。ところが、さいたま市はスポーツをする場所が足りない。さいたまスポーツコミッション(SSC)でイベントを企画しても施設にほとんど空きがない。

 本来はオリンピックイヤーだった2020年を起点に、さいたま市でサッカーに続く第2のスポーツ、バスケットボールが広がるランドマークとなる新しいアリーナが必要だ。私はスポーツのまちづくりのためにブロンコスを獲得し、バスケというコンテンツを用意した。あと必要なのはハード。アリーナというマイホームを得ればブロンコスは持続的に成長できるし、SSCの経営にも有益。市民はバスケに触れ、スポーツもできる。2020年は「新生ブロンコスが生まれ、バスケ文化が普及した始まりの年」として記憶されるだろう。

 サッカーは市場が成熟しているのに比べ、バスケは成長が見込める。人気に火が付けば大きな波及効果が生まれ、全方位的にウィンウィンの関係を築ける。

 新アリーナがなくてもブロンコスはBリーグ3部で優勝するような、中途半端な形ではやっていけるだろう。ただ「スポーツ先進都市」を掲げるさいたま市をホームタウンとするクラブチームが、そんなレベルでいいのだろうか。

 アリーナ建設にはまちづくりの観点が重要。複数の学識経験者にも話を伺ったが、さいたま市はまちづくりのプロがいない印象だ。横浜市は行政マンでも熱意を持った人が現れ、力になってくれた。

 次世代型スポーツ施設は清水勇人市長の公約だが、このままでは体育館の延長線上になってしまう可能性もある。街との関係、ミニNBA化、デザイン、市民ファンド…あらゆる部分で最先端を目指すべき。オリンピックのバスケットボールが来た街なら施設の細部にまで情熱と気概を込めたい。

 さいたま市が「スポーツのまち」として発展するには、バスケ文化を広げるコンテンツが不可欠。新アリーナは巨大なパズルを完成させる最後の1ピースなのだ。

■池田純(いけだ・じゅん)

 1976年横浜市生まれ。早大卒。住友商事、博報堂を経て2011年12月、横浜DeNAベイスターズの初代社長に就任、観客動員数、売り上げ拡大に実績を挙げた。16年10月の退任後はスポーツ庁参与などを歴任し、19年3月から現職。

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