埼玉新聞

 

コウノトリが自然ふ化、渡良瀬遊水地で確認 野生絶滅以降、東日本で初 幸せを運ぶ鳥、野生復帰へ

  • 親鳥から餌をもらうしぐさで巣から顔を出したコウノトリのひな=7日午前9時半ごろ(戸田利一さん撮影)

 本県をはじめ、栃木や群馬、茨城の4県にまたがり、ラムサール条約湿地に登録されている渡良瀬遊水地で、コウノトリのふ化が確認され、加須市のアマチュアカメラマンで、建築士の戸田利一さん(71)が7日、ひなの撮影に成功した。野生復帰の活動を進めてきた栃木県小山市によると、野生絶滅以降、放鳥されたコウノトリの自然ふ化が東日本で確認されるのは初めてという。

 同市は、渡良瀬遊水地が国際的に重要な湿地としてラムサール条約に登録された2012年以降、コウノトリの野生復帰へ向け、遊水地内と周辺の計5カ所に人工巣塔を設置するなど営巣環境の整備に取り組んできた。その結果、18年2月に千葉県野田市で放鳥された雄「ひかる」(4歳)に続き、今年3月には徳島県鳴門市生まれの雌「歌」(2歳)がそれぞれ同所に定住したという。

 小山市渡良瀬遊水地ラムサール推進課などによると、ボランティア団体「渡良瀬遊水地見守り隊」などの観察で、産卵と抱卵が推定されたのは、4月26日ごろ。遊水地内の人工巣にしゃがみ込むようになり、同27日以降は交代で卵を温めるような行動を取った。その後、5月30日に立ち上がるしぐさが確認され、ひなの誕生が期待されていた。

 何人ものカメラマンが撮影に挑戦していたが、戸田さんは、堤防の上から1200ミリのレンズで狙い、親鳥から餌をもらうひなの姿を捉えた。

 コウノトリは、豊かな自然環境でしか生息できない生物多様性のシンボル的存在。「幸せを運ぶ鳥」としても親しまれている。日本では1971年に野生絶滅したが、人工繁殖させた個体を放鳥している。

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