埼玉新聞

 

<もっとさいたまにスポーツを5>選手契約は兼業前提 初のパートナー企業に感銘 ファンも一緒に成長して

  • 池田純氏

 新生埼玉ブロンコスとして記念すべき第1号のパートナー契約を5月15日に結んだ。

 コロナ禍でスポーツ業界もスポンサー離れに苦しんでいる。そこには、もうかった企業が単純なスポンサーになるような、お金ができたらベンツに乗るようなスタイルの終わりが垣間見える。私たちはアフターコロナを待つのではなく、「コロナの時代」を生き抜かなければならない。ビフォーコロナの意識ではパートナー企業は見つからない。

 第1号パートナーは深谷市のセイフルという会社。主にBtoB(企業、法人向け)のビジネスをしてきたが、4代目の岡田高和社長は地域に開いた会社に変革しようと模索していた。コロナ禍を生き残り、新しいスポーツの形を目指す私たちの取り組みを知り、深谷でバスケットボールの基地づくりをやりましょうと賛同してくれた。ユニホームのパンツには控えめに社名を入れれば十分で、名前を売りたいわけではないという同社の姿勢にも感銘を覚えた。

 ブロンコスの選手が深谷へ行き、子どもたちにバスケを教える。そのことを通じてバスケ文化をつくり、普及させ、地域活性化につなげる。単なるスポンサーではなく、地域にも会社にもウィンウィンな「スポーツを活用した街づくり」のパートナーだ。ブロンコスは所沢市に練習拠点があり、さいたま市でも探している。深谷市にはいち早くパートナーができた。こうした関係をもっともっと結びたい。

 コロナ禍でも現状を「変えたい人」とはつながれる。さいたまスポーツコミッションも行政と何ができるか検討を始めており、形になれば良い感じで回りだすだろう。やはりバスケというコンテンツのポテンシャルは大きかった。

 選手との契約交渉も進めている。考えているのは「二足のわらじ」戦略。6年スパンのクラブとチームの成長戦略の中、経営戦略を理解する選手とのみ契約する。バスケ以外にもクラブ経営に資する能力のある人材で組織づくりをスタートしたい。1人は選手以外に営業もやると言っており、契約が取れれば30%の成功報酬を渡す、選手兼営業課長。コーチとしての潜在能力が高い選手はコーチ兼選手。コーチのライセンスを取得させ、能力が高ければ将来、正式なコーチになる道もある。

 デザインができる選手もいる。175センチ程度の身長でダンクシュートができ、インスタグラムに4万人のフォロワーがいる選手もいる。試合前にダンクシュートをして見せるのを条件に、選手兼ダンク担当、兼SNS担当兼デザイナーで契約する。

 コロナの時代は、ポートフォリオ(収入の構成比)を変えなければならない。収入の基盤だったものに頼るのではなく、稼ぎ方を変える。選手にはコロナ後の「かっこいい生き方」を実践してほしい。

 ブロンコスが変わることにさまざまな意見や異論があるのは健全なこと。一部のコアなファンには「自分たちのブロンコス」という思いも強いだろう。しかし、新しいファンが入りづらい環境にはしたくない。ファンも一緒に成長してほしい。

■池田純(いけだ・じゅん)

 1976年横浜市生まれ。早大卒。住友商事、博報堂を経て2011年12月、横浜DeNAベイスターズの初代社長に就任、観客動員数、売り上げ拡大に実績を挙げた。16年10月の退任後はスポーツ庁参与などを歴任し、19年3月から現職。

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