埼玉新聞

 

<新型コロナ>園児との交流見送り 再会待つ高齢者ら、施設に手書きのメッセージ「コロナにまけるな」

  • 高齢者施設の窓に張られた手作りのメッセージ=19日午後、さいたま市桜区

 さいたま市桜区の高齢者施設「みんなの家・中浦和」の窓に、3月下旬から手書きのメッセージが貼られている。新型コロナウイルス感染拡大のため、交流できなくなった近所の園児に向けたもので、施設長の下条幸洋さん(52)は「みんなが園児と再会の日を楽しみにしている」と話す。

 メッセージは「おたがいげんきでがんばろう」「コロナにまけるな」「てあらい うがい」。施設を利用する高齢者36人の中で協力して、筆でA4サイズの紙に描いた。

 同施設前の道路が近所にあるわらしべ保育園の散歩コースになっていることで、約1年前から交流が始まった。園児は午前9時過ぎに施設前を通るたびに、2階と3階の窓に向けて手を振る。それに応えるように、高齢者も笑顔で手を振り返す。毎日のこの時間は、高齢者の楽しみの一つだった。

 3月下旬には卒園する園児約20人が、施設前から「いつもてをふってくれてありがとう」と手作りのメッセージボードを掲げたこともあった。その後は一緒に写真撮影するなど交流を深め、涙ながらに喜ぶ高齢者もいたという。

 そんな園児へお礼の意味を込めて今回、同施設で手書きメッセージを企画した。

 新型コロナウイルスへの注意を呼び掛けるほか、園児へは「いつもえがおをありがとう」と感謝の気持ちを伝えている。そして園児たちが描いた高齢者の似顔絵も飾っている。

 4月から家族との面会が自粛となり、寂しさからストレスを抱えた高齢者も多いという。もちろん、園児との交流も当面見送られ、肩を落とす高齢者もいるという。

 しかしコロナ収束後に向けて、同施設では七夕や夏祭りなど、交流イベントを企画している。また再会のプレゼントとして、高齢者は園児へ折り紙も用意している。下条施設長は「園児の笑顔が入居者や職員にとって最大の癒やし。1日も早いコロナ収束を願い、今後も交流を深めていきたい」と再会を待ち望んでいる。

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