埼玉新聞

 

<新型コロナ>無利子融資に申請相次ぐ 日本公庫激、県外から増援など対応「新型コロナ原因の倒産減らす」

  • 多くの経営者が資金繰り相談に訪れる日本政策金融公庫さいたま支店=さいたま市大宮区内

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、苦境となる県内事業者が増加し、資金需要が拡大している。「実質無利子」の融資を扱う日本政策金融公庫(日本公庫)には申請が相次ぎ、本部など県外拠点からの職員の増援などを得て、対応している。喫緊の苦境改善へ予防的に手元の運転資金を厚くしようとする、事業者が後を絶たない。

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 「3月中旬から、問い合わせが急激に増加した」と話すのは日本公庫さいたま支店の石井敏雄支店長。同時期から1日の問い合わせ件数が、通常の営業時より最大で10倍以上となる日が頻発しているという。増加したのは日本公庫に実質無利子・無担保で借り入れができる特別貸付が創設されたからだ。

 日本公庫の新型コロナウイルス感染症特別貸付は、直近3カ月間のうち、いずれかの1カ月と前年同期を比べ、中小企業で売上高が20%以上、小規模事業者15%減少した場合、国が金利分を補完し実質無利子で借りられる制度。同支店は実質無利子で利用できる点が申請急増の要因とみる。

 主な問い合わせ業種は、3月は建築関連、外出自粛などの影響で利用客が減った旅行や物販、外食など。4月以降は大手自動車製造拠点の生産休止の影響を受けた自動車関連の製造業からの問い合わせが急増しているという。

 同支店など県内の各支店には本部からの応援職員が派遣され、各種対応に当たる。新型コロナ感染防止のため、郵送やWEBでの申請も呼び掛ける。支店内の混雑は少し解消されるも、申請の数は高止まりしている。

 県内でテナントビルなどを貸し出す不動産会社は、4月に入り賃料を半年間限定で2割下げたが、固定費などの対応へ、手元資金を厚くしようと日本公庫の特別融資で8千万円を借り受けた。当面の資金繰りにめどが立つも「今後、賃料支払い猶予などの申し出も予想され、さらに厳しくなるかもしれない。さらなる融資や固定費の見直しを検討する必要がある」と、苦しい胸の内を語る。

 自動車部品メーカーは、自動車メーカーの製造拠点の生産休止を受け5月以降の発注は、皆無に等しい状態で、先行きを不安視し特別融資で数千万円の融資を受けた。ただこれだけでは心配として、県の特別融資も利用すると話す。

 県では国の支援をベースに1日から3千万円を上限に当初3年間無利子、保証料率0%での特別制度を始めた。県内の民間金融機関で扱う。石井支店長は「県内の金融機関でも日本公庫と同様の特別融資制度の取り扱いが始まったことで、日本公庫の店舗網だけでは対応しきれなかった地域や企業まで補えるようになる」とみる。

 感染拡大の終息時期が見通せず県内経済もしばらくは厳しい状況が続く可能性は低くない。回復局面になれば多くの事業者の活躍が必須だ。それを踏まえ石井支店長は「新型コロナが原因の廃業や倒産を減らすのが最大の役目。回復転換期に少しでも多くの事業者がそれに寄与できるよう、支援を推進したい」と話す。

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