埼玉新聞

 

<新型コロナ>書籍が人気、感染対策して県内書店が独自フェア 普段は足を運ばない学生の姿も

  • 「免疫力を高めるフェア」として設置されたコーナー=さいたま市桜区上大久保の一清堂

 新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるための休校措置や外出自粛の影響で、書籍への注目が集まっている。図書館が閉館し大型店の休業が相次ぐ中、埼玉県内にある郊外や中規模の書店では独自のフェアなどを展開。自宅学習用のドリルや児童書の需要も上向きだ。「いつも利用してくれる地元の人の気分転換の一環になれば」と感染対策をしながら営業を続け、外出自粛によって本を読みたいという気持ちに応えようとしている。

 手作りマスクの作り方、トレーニング法。健康面について紹介された本の上には「免疫力アップ コロナに負けるな」の文字が躍る。さいたま市桜区の一清堂では、4月に入ってから「免疫力向上フェア」を実施。免疫力の向上をテーマにスタッフが本を厳選した。

 「地域の人に少しでも明るい気持ちになってもらえるものを提供したい」と清宮久美子社長。店内では笑って読める小説や学生向けの本なども紹介している。

 コロナウイルス関連の書籍の傍らで人気なのは学習ドリルや児童書、教科書ガイドなど。休校措置や大型店が休業を決めた後から買い求める客が増え始め、出版社への発注数を増やすなど対応に追われる。併せて人気なのが、学校教員が児童の宿題を確認した印として使うスタンプ。動物のキャラクターに「よくできました」などの言葉が添えられ、ドリルと一緒に購入していく親も多いという。

 普段はあまり書店に足を運ばない学生の姿も目立ってきた。そこで恩田陸さんや森絵都さんらの作品を集め、書棚で紹介している。

 同店の堀江健司店長は「読書は自粛の中でも楽しめる娯楽の一つ。本の楽しさを知ってもらう機会になれば」と話す。

 母親と共に同店を訪れた小学2年の男子児童(7)は「算数が苦手なので頑張りたい」と意気込む。母親は「学校の先生のように丁寧に指導することが難しいので役立てたい」と教科書ガイドを購入していた。

 店舗では除菌スプレーを設置したり換気をしたりして、新型コロナウイルスの感染防止策を講じている。

 さいたま市岩槻区の水野書店では、外出自粛の影響で絵本を購入する客が増加。夫と共に書店とカフェを営む水野時枝さん(70)は「孫のために絵本を購入する祖父母の姿も多い」と話す。

 緊急事態宣言発令後は美容室や車のディーラーなどの休業が相次ぎ、店舗に届けていた本や雑誌のキャンセルも入っているという。

 現在は営業時間を短縮しながらも営業を継続。水野さんは「地元の人の気分転換になるようにできるだけお店は開けておきたい」と話していた。

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