埼玉新聞

 

響け「専用」ホイッスル! 管楽器部品製作の技術生かし「ラグビー専用」を開発・販売 音にこだわり2種類

  • 小柴製作所が開発、製造したラグビー専用ホイッスル

    小柴製作所が開発、製造したラグビー専用ホイッスル

  • 「新しいホイッスルを開発したい」と話す小柴一樹社長

    「新しいホイッスルを開発したい」と話す小柴一樹社長

  • 小柴製作所が開発、製造したラグビー専用ホイッスル
  • 「新しいホイッスルを開発したい」と話す小柴一樹社長

 「少しでも引っかかるようなことがあれば、直していくことです。80点が合格ラインでも、85点の仕事をして出荷します」―。サックスやフルートなど管楽器の部品の溶接や研磨を中心に製作する「小柴製作所」の社長小柴一樹さん(44)は最も大切にしていることをこう語る。

 サックスは50~60個の真ちゅう製の部品を仕入れ、研磨機で磨いたり、ハンダ付けの溶接を施して出荷する。同業者も同じ機械や工具を使用しており、製品の評価は職人の腕次第。このため、難しい仕事にチャレンジしたり、機械と人間の分業を図るなど職人のモチベーション維持に苦心する。

 2019年のラグビーワールドカップ(W杯)日本大会を控えた18年、ラグビー専用のホイッスルを開発した。身体がぶつかるスポーツで選手が熱くなりがちなため、音を低目に抑えた。従業員の提案がきっかけで、発想から1年半の試行錯誤を重ね、同社初の自作商品を世に送り出した。

 審判員らからは「小さい息で大きな音が出る」と評判になった。ラグビーブームに沸く19年は年間2千個を納品した。現在は、音が低いがやわらかく、周囲の選手に届く質量の少ないタイプとこれより質量が多く、音がより強いタイプの2種類のホイッスルを製造、販売している。

 創業は1981年。ヤマハの技術職の社員だった小柴さんの母親が退職後、同社の下請けを頼まれたのがきっかけ。自宅を改造した自営業だったが、8年後に法人化し、同じくヤマハを退職した父親の四郎さんが社長に就任。当時は旧大井町にあったヤマハ工場の仕事を請け負っていた。

 長男の小柴さんは大学卒業後、印刷やアパレル会社の社員などを経て2008年、小柴製作所に就職。営業と溶接を中心に携わり、22年、2代目社長に就任した。「本当はやりたいこともあった。ただ、学生の頃から職人さんたちを見ており、恩返しもしたかった」と振り返る。

 今は「サッカーなどではコルクのない音の抜けるだけのホイッスルが主流だが、コルクがあれば、審判にとっては抵抗感のある気持ち良い音が出るんです」と新たな開発に思案を巡らせている。

■所在地

 埼玉県ふじみ野市大井中央3の27の6▽電話049・264・4316

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