埼玉新聞

 

<新型肺炎>大宮駅東口の繁華街、自粛要請で人影まばら 飲食店、懸命に活気づくり「終息したらまた来て」

  • 人影まばらな通称南銀通り=17日午後7時ごろ、さいたま市大宮区

  • 営業時間変更を知らせる居酒屋「アカマル屋」大宮すずらん通り店=17日午後4時ごろ

 新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、大野元裕知事は県内の飲食店に17日から5月6日まで、酒類の提供を午後7時までとするよう要請した。県内最大の歓楽街・さいたま市大宮区の大宮駅東口では、飲食店が要請に戸惑いながらも、テークアウト販売などに力を入れて活気を懸命につくり出そうとしていた。

 要請初日となった17日夕方、駅東口の北側の繁華街を歩くと、半分くらいの店が休業していた。営業している店の中には、店の外にテーブルを並べてテークアウト販売に力を入れる店舗も。

 居酒屋「アカマル屋」すずらん通り店は既に12日から閉店時間を早め、午後6時45分で酒類などの注文を取りやめている。本川忍店長(42)は「埼玉はこれまで、飲食店への自粛要請がなかったから、営業時間の設定に戸惑いはあった。今回の要請で見切りがついた面もある。今の環境で、できる限りの接客をしていきたい」と話す。

 別の居酒屋は17日から酒類の提供を午後7時までと決めた。男性店長(52)は「緊急事態宣言の中、今は受け身にならず、自分たちで何ができるのかを考えていきたい」と前を向く。今後の営業は食事のバリエーションを増やしたり、テークアウトに力を入れるなど、経営を維持するための体制を検討していくという。

 通りを歩くと予想よりも人出は多い。ある店員は「(金曜の)今日は日曜夜と同じくらいの状態」と話した。

 大野知事は酒類提供の自粛理由について「東京から夜7時以降、埼玉に飲みに来る方々が多くあり、懸念すべき状況」と説明している。バーを経営する男性(46)は「緊急事態宣言の発令後、都内の人かは分からないが、見慣れない客を見掛けるようになった」と話す。「都の方針と足並みをそろえることで、感染拡大防止につながるのであれば、仕方がないこと」と切り替えていた。

 駅東口の南側にある南銀座通り(南銀)は普段の金曜日なら、仕事帰りの会社員らでにぎわう。細い路地を歩くと、シャッターを閉めて臨時休業の張り紙をしている店が目立った。「渋いっすね」と語る客引きの男性は「金曜日の夜だから少し人通りがあるけれど、土日はほとんどない」という。午後7時を過ぎて酒類を提供している店も。ガールズバーを勧誘していた女性は「(景気は)ぼちぼち。意外にお客さんは来ますよ」と笑顔だった。

 南銀で店を構える居酒屋は、客足の鈍さに肩を落とす。訪れた時、店内に客はいなかった。約40年間、店の経営に携わってきたという60代男性は「金曜の夜だというのに、これだけ客が入らないのは初めての経験。今月の売り上げは前年の1割に満たない」と窮状を訴える。

 「休業補償があるなら店を閉めたいが、個人店はその日その日で切り盛りをしているので、店を開かない限りは一銭にもならない。無担保で貸し付けてくれるという話も来ているが、この状況が続けば、返せなくなるかもしれないので不安」。苦しい現実を憂いながらも、男性は「一日も早く、にぎやかな街に戻ってほしい。終息したらまた来てよ。店がお客さんでいっぱいなのを見せたいから」と話した。

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