埼玉新聞

 

<新型肺炎>一斉休校に嘆く給食業者 パン製造ライン停止 廃棄予定の食材全て、子ども食堂に寄付

  • 休校の影響で出荷できず、山積みになった給食用食材=13日、さいたま市見沼区

 新型コロナウイルスの感染拡大防止に伴う一斉休校で、県内の給食業者が打撃を受けている。給食が中止となったことでパンなどの製造は停止、出荷予定だった食材も余った状態だ。「先が見えない」「4月以降はどうなるのか」。各校がこのまま本来の春休みに入ろうとする中で、苦悩の春が続く。

■収入なし

 「3月の売り上げはかなり少なくなる」。県内全域の小中高校と特別支援学校に給食を提供している県学校給食会(北本市)は、不安を打ち明けた。

 同会は各学校にコメやパンなどの主食と、缶詰や冷凍食品、乾物などの副食を納めている。一斉休校を受け、パンなどの製造を停止。食品廃棄などの損害は出ず、消費期限内の食材は保管して再開に備える。

 同会からパンなどの製造の委託を受ける県学校給食パン・米飯協同組合(さいたま市)の担当者は「製造ラインを停止し、収入は全くない。納品済みの食材も残ってしまった。4月以降も続けば、どうなるか分からない」と嘆く。

 従業員への給料支払いは通常通り発生し、パート従業員も長期休暇期間と同様に掃除をさせるなどして雇用を継続。手元に残った精米は保管業者に預けたが、配送業と保管料で約100万円の出費となった。

■運搬車

 県内ほか東京や千葉など、関東約90の自治体に給食用食材を卸している丸宮食品(さいたま市見沼区)。普段なら平日の昼すぎは運搬車が慌ただしく出入りするが、現在は多くが駐車場に止まったまま。保管用冷凍庫には、出荷予定だった給食用食材の冷凍野菜やデザートの箱が、高く連なる。

 「本来なら児童らに喜んで食べてもらうのに残念」。野口和海企画室長(33)は山積みの箱を前に頭を悩ませる。

 同社は一斉休校決定を受け、仕入れ先との発注などを巡り、対応に追われた。休校の影響で納入できない給食用食材のうち、賞味期限の迫った乳製品などは約2・7トン。「食品会社としてこれだけの量を廃棄するのは心苦しい」と野口室長。子育て世帯の負担を軽減してもらおうと、廃棄予定の食材全てを子ども食堂などに寄付した。

 営業と事務職員は通常勤務し、配送スタッフの半数が有給休暇を消化中。アルバイトやパート職員もほとんどが休暇を取っているという。

 同社は休校の影響で約2億5千万円の減収を見込んでいる。「先が見えずつらい。4月から学校が通常通り再開し、早く日常に戻ってほしい」。野口室長は祈るように話す。

■2万本

 小鹿野町小鹿野の戸田乳業は秩父地域を中心とする小中学校などに、1箱200ミリリットル入りの給食牛乳を1日約2万本提供している。同社の戸田喜裕社長は「工場の規模は大きい方ではないが、工場が遊んでしまうので、売り上げが立たない」と困惑している。

 同社は牛乳だけでなく、炭酸飲料やお茶なども製造している。ただ、学校給食がある時にはパートを増やして対応していたという。戸田社長は「影響はうちだけではなく、仕方のないことだが、小中学校の休みの期間が長くなったことで、通常の予定よりも早く暇になってしまった」と嘆いていた。

 県教育局保健体育課は休校中に給食も停止することについて「学校を開けていない状況では、学校給食法で定められた学校給食提供の条件を満たすのは難しい」と説明する。

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