埼玉新聞

 

埼玉・群馬間で異変?! 利根大堰でサケの遡上が激減、約10年で1万8千匹超→64匹に 同じ魚道通るアユは増

  • 元気よくジャンプしながら遡上する稚アユ=5月12日午前9時55分ごろ、利根大堰

    元気よくジャンプしながら遡上する稚アユ=5月12日午前9時55分ごろ、利根大堰

  • 利根川を遡上するサケ=2009年11月、利根大堰

    利根川を遡上するサケ=2009年11月、利根大堰

  • 元気よくジャンプしながら遡上する稚アユ=5月12日午前9時55分ごろ、利根大堰
  • 利根川を遡上するサケ=2009年11月、利根大堰

 利根川中流の埼玉県行田市須加と群馬県千代田町をまたぐ利根大堰(おおぜき)を遡上(そじょう)する魚の数に異変が起きている。ここ数年、サケの遡上数は減少しているのに対し、アユは増加して回復傾向にある。同じ魚道を遡上しており、条件は同じ。いずれも回遊魚のため生態に謎の部分が多く、明確な原因は分かっていないが、海で過ごす期間の長さが関係しているとの指摘もある。

 国内の河川でふ化したサケの稚魚は春に降海し、動物プランクトンや小魚などの餌を求めて北太平洋を回遊。4年ほどかけて成長し、秋に繁殖のため、生まれた川へ戻ってくる。

 水資源機構利根導水総合事業所は1983年以来、毎年10月1日から12月25日まで利根川のサケ遡上数を調査している。遡上数は83年が21匹にとどまったが、95年から97年にかけて魚道を改修。サケが上りやすくなったため、遡上数は急増した。

 2011年に初めて1万匹を超え、13年には過去最多の1万8696匹を計測していた。しかし、近年は減少傾向にあり、16~18年は4千匹前後で推移し、19、20年は129匹、140匹と激減し、21年は36匹、22年も64匹にとどまった。

 一方、アユは秋に川を下り、中流から下流の細かい石がたくさんある場所で卵を産む。ふ化した稚魚は遊泳力がついてから川を流下し海へ向かう。稚魚は冬の間は海で過ごし、春になるとまた川を遡上する。

 同事業所は毎年4月21日から5月31日まで、稚アユの遡上数を計測。12年に10万匹を超えていたが、その後は1万~8万匹台が続いていた。しかし、昨年は18万9564匹で、21年の1万5976匹から激増。今年は昨年より少なかったものの、9年ぶりに8万匹台となる8万5485匹で調査を終えた。

 稚アユの増加は荒川でも確認されている。同事業所は荒川の秋ケ瀬取水堰(志木市)でも毎年3月27日から5月15日まで、稚アユの遡上数を調査。21年は4万4663匹だったが、昨年は19万1328匹に急増し、今年は10万6407匹だったという。

 県水産研究所は「サケとアユは回遊魚ではっきりと原因を特定するのは難しい」と前置きした上で、「秋の長雨などで河川の流量が増え、ふ化したアユが速やかに海まで流された可能性は考えられる」と指摘。アユに比べて海での成長期間の長いサケについては「海水温度や餌の状況などが変わり、それが影響しているのではないか」と推測した。

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