埼玉新聞

 

事務所火災…鋳物工場の3人が消火、いつも溶けた鉄と向き合い「火は怖くない」 川口の消防署が感謝状

  • 感謝状贈呈式で(左から)石川義明社長、三木一浩さん、白川大貴さん、鯉沼竜さん、板橋匡署長=川口市の南消防署

 川口市江戸袋2丁目の運送会社事務室で昨年12月に発生した火災で、隣にある鋳物工場の従業員3人が初期消火活動を行い、3階建て建物の1階部分の被害に食い止めることができた。「3人の迅速かつ適切な初期消火活動がなかったら大火災になった」として、南消防署(板橋匡署長)は3人に感謝状を贈った。

 3人は運送会社の隣の鋳物工場「石川金属機工」の社員たち。三木一浩さん(45)は神戸市出身で鋳物担当の課長。白川大貴さん(37)は東京都江戸川区出身で旋盤など金属加工担当の課長。鯉沼竜さん(32)は東京都町田市出身で事務担当の係長だ。

 火災は昨年12月28日午後2時10分ごろ、運送会社の3階建て事務所の1階から出火。狭い道路を隔てた隣が石川金属機工の工場で、社員総出で仕事納めの大掃除の真っ最中だった。三木さんら3人は工場の外の道路で一休みしていた。

 「突然、向かいの事務所から黒い煙が噴き出した。火事かなと話し合っていると、パリンと音がして窓ガラスが割れたので、火事だと分かった」と三木さん。

 3人は自社の工場の中へ駈け込んでそれぞれ1本ずつ消火器を持ち、運送会社の窓から消火器を噴射した。普段の仕事で使う防火ヘルメットとやけど防止用の厚い革手袋も着用した。

 消火器を使い切ったころ、火災発生の119番から約6分後に消防車が到着。「その頃には炎は消え、火災はほぼ鎮圧状態だった。3人の勇気ある行動がなければ大火災になっていた可能性があった」と板橋署長は言う。

 普段、電気炉から1200度に溶けた鉄を取り出し、鋳型に流す「鋳込み」も担当している三木さんは「溶鉱炉にいつも向き合って仕事しているので、火は怖くない。当たり前のことをしたまで」。白川さんは「無我夢中だった」。鯉沼さんは「初期で食い止められて良かった」と話した。

 石川金属機工の石川義明社長は「ひるまずに迅速に対応できた。なるほど、うちの社員だ。誇りに思います」と語った。

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