埼玉新聞

 

<川口いじめ>市側、いじめ認定の調査報告を全面否定「いじめ防止法は欠陥ある」 原告「ありえない」

  • 川口いじめ訴訟で、会見し「ありえない主張」と川口市を批判する原告代理人ら=18日午後、さいたま市浦和区

 中学校や川口市教育委員会の対応が不適切だったとして市立中学校の元男子生徒(16)=県立高校2年生=が市を相手に損害賠償を求めた裁判の第6回口頭弁論が18日、埼玉県のさいたま地裁(岡部純子裁判長)であった。被告の川口市側が「いじめ防止対策推進法は法律として整合性を欠き、欠陥がある」と新たな主張を盛り込んだ準備書面を提出した。

 元生徒の母親と共に、さいたま市内で会見した代理人の石川賢治弁護士は「川口市のような地方公共団体が、国会で成立した法律に欠陥があると主張することは初めて聞く。基本的にあってはならない主張であると思い、驚いている」と批判した。

 石川弁護士によると、いじめの定義について被害者と加害者の関係に加害者の優位性を条件として取り入れるべきとするのが日弁連の見解。しかし、それだといじめ認定の範囲が狭くなり、いじめを見過ごしてしまう欠陥がある。このためいじめの範囲を広く取り、いじめを見逃がさないようにしようというのが防止法の定義だという。

 石田達也弁護士は「川口市の主張は、いじめの定義を法以前の欠陥のある定義に戻してしまおうというもので、とんでもないことだ」と指摘。石川弁護士は「川口市は日弁連のような法律家の団体ではない。法の欠陥の有無などを述べることは許されない」と厳しく批判した。

 2018年3月に市が設置した第三者調査委員会は原告のいじめ被害について「法律上いじめと認定できる行為があり、その行為が不登校の主たる原因と考えられる」と、いじめがあったと認定した。

 しかし、市は訴訟で第三者委の調査報告がいじめと認定したこと自体を事実上全面否定する内容の準備書面を提出している。

 市側の姿勢について、母親は「息子へのいじめについて、市は3年間にわたり文科省から『法律に従え』という指導を繰り返し受けてきた。それに従わなかったのはいじめ対策推進法が間違っているからという主張なのかどうか、聞いてみたい」と語った。

 さらに「今回の主張を見て、川口市の本性を見たと感じる。市は独自に勝手なルールを持ち、気に入らないものは守らない姿勢。調査委の報告を受けて市教委が反省するとして謝罪したのは一体何だったのかと思う」と述べた。

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