埼玉新聞

 

難病の医学博士・藤井輝明さん、幼少期から激しいいじめ 投石「化け物」 岩槻で講演「前を向くこと大事」

  • 「自分の個性を大切にし、勇気を持って前向きに人生を歩んでほしい」と児童に話す藤井輝明さん=11日午後、さいたま市岩槻区

 さいたま市岩槻区の新和小学校(河野秀樹校長)で11日、難病のある医学博士の藤井輝明さん(62)による「ふれあいタッチ交流授業」が行われた。藤井さんは小学生の時に病気の影響でいじめられた経験を話し、「自分は世界に一つだけの存在。個性を大切にし、誇りを持って前向きな人生を送ろう」と児童に力強いエールを送った。

 藤井さんは2歳のころ、顔の右半分にふくらみ(難病の一種である血管奇形の海綿状血管腫)が現れ、幼少期から激しいいじめに遭った。「化け物は学校に来るな。この町から出て行けなど言われ、本当に辛かった」。石を投げられたことも数えきれないという。

 いじめを避けるため小学2年で転校した学校では、周囲が病気を理解してくれた。「輝ちゃん(藤井さん)の素晴らしい個性だよ、笑顔が素敵だよと言われた事は今でも忘れられない」と振り返る。

 自分の病気の原因を知り、同じ思いで苦しんでいる人の力になりたいと医学の道に進み、現在は医学博士として大学などで教壇に立っている。

 授業では藤井さんへ多くの質問が飛んだ。「昔の自分に言いたいことは」との問いに、「病を恨んだこともある。しかし病にならなければ分からなかったことも数多くある。病に罪はない。一番大事なのはネガティブにならず、自分が前を向くこと」と話した。また「普通の人とは違う顔だけども、生きていたからこそ皆に会えた。それがうれしい」と優しく児童に語りかけた。

 藤井さんが講演で訪れた小中学校などは全国2000校以上に及ぶ。また顔に病気や傷を抱える人への偏見や蔑視を無くそうと、著作活動も行い、小中学校の道徳の教科書にも取り上げられている。

 授業の最後では、児童が藤井さんの顔に直接触れて交流を深め、再会を約束した。

 5年の神田澪亜さん(12)は「勇気を持つ大切さを学んだ」。将来は医者を目指しているという佐々木陸さん(11)は「前向きな考え方をこれからの人生で実践していきたい」と話していた。

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