埼玉新聞

 

【連載】埼玉発・企業トップが語る成長戦略 徹工業・古屋徹社長〈後編〉 激変する製造業を生き抜く先行投資 圧倒的な技術優位性の確立へ

  • インタビューに答える徹工業の古屋徹社長=久喜市桜田の本社

    インタビューに答える徹工業の古屋徹社長=久喜市桜田の本社

  • 樹脂全般の切削加工、特殊加工の加須工場=加須市川口(徹工業提供)

    樹脂全般の切削加工、特殊加工の加須工場=加須市川口(徹工業提供)

  • 大型フレームの加工もできる高柳工場=久喜市高柳(徹工業提供)

    大型フレームの加工もできる高柳工場=久喜市高柳(徹工業提供)

  • 鋼材加工、大型製缶加工などを行っている白岡工場=白岡市彦兵衛(徹工業提供)

    鋼材加工、大型製缶加工などを行っている白岡工場=白岡市彦兵衛(徹工業提供)

  • インタビューに答える徹工業の古屋徹社長=久喜市桜田の本社
  • 樹脂全般の切削加工、特殊加工の加須工場=加須市川口(徹工業提供)
  • 大型フレームの加工もできる高柳工場=久喜市高柳(徹工業提供)
  • 鋼材加工、大型製缶加工などを行っている白岡工場=白岡市彦兵衛(徹工業提供)

 金属加工などを手がける徹工業(久喜市桜田)が成長を続けている。幅広い業界を顧客に持ち、さらなる飛躍に向け30億円規模の大型投資に踏み切ることを決めた。古屋徹社長に未来へ向け次の一手を聞いた。

 ―新工場は地域においてどのような役割を果たしていくのでしょうか。

 「新工場にはデジタルサイネージ(電子看板)を設置して、地域の皆さまに役立つ情報発信を考えている。自社PRの枠を超え、災害時の避難情報や久喜市の行政ニュース、近隣学校の活動紹介といった街のインフォメーションボードとしての役割を持たせる。有益な情報を発信し、鷲宮エリアの新たなランドマークを目指す」

 「私たちが目指すのは、単にモノを作るだけの閉ざされた生産拠点ではない。地域社会に開かれ、住民の皆さまと共生するコミュニティの結節点となることだ。地域に根ざし、地域に愛され、なくてはならない存在になること。それこそが、新工場に課せられた使命でもある」

 ―30億円は非常に大きな投資ですが、勝算は。

 「すでに年間12億円規模にのぼる新規の大型案件の内示をいただいており、ビジネスは力強く動き出している。これまでも他社に先駆けて最新設備を導入し、顧客の期待に応えることで成長してきた。今こそ、さらなる成長に向けた変革期だととらえている。今回の30億円という投資額は、極めて大胆な挑戦であることは間違いない。しかし、これは単なる規模の拡大を狙ったギャンブルではなく、緻密な市場分析と顧客ニーズの先読みに基づいた再現性の高い戦略的な投資だ」

 「製造業を取り巻く環境は激変しており、多品種少量生産や超短納期、そして環境負荷の低減といった高度な要求が次々と突きつけられている。これまでの設備や体制の延長線上では、いずれ顧客の進化スピードに追いつけなくなるという危機感があった。先行投資によって圧倒的な技術的優位性を確立し、競合他社が追随できないポジションを築く。今回の投資も必ずや数年以内に大きな実を結び、さらなる企業価値向上へとつながる確固たる勝算がある」

 ―今後の経営課題は何ですか。

 「企業は人がすべて。人材育成が最重要課題だ。特に次世代を担う経営幹部の育成に注力している。その一環として、現在は選抜された10人のチームを組織し、定期的な研修を通じて持続可能な経営体制の確立を急いでいる。どれほど素晴らしい最新鋭の工場を建て、高価な機械を導入したとしても、それを動かし、イノベーションを起こし、顧客に価値を届けるのは最終的には『人』だ。新工場の稼働によりハードウェアは完璧に整うが、それを使いこなすソフトウェア、社員のスキルとマインドが伴わなければ宝の持ち腐れになってしまう」

 「現在、私が最も危機感を持っているのは、経営のバトンタッチを見据えた後継者育成計画の重要性だ。そこでスタートさせたのが、各部門からエース級の中堅・若手メンバーを選抜した10人の次世代リーダー育成プロジェクトだ。この研修は、単に経営知識を座学で学ぶだけのものではない。外部の専門家も交えてディスカッションを行う実践的な内容だ。彼らが次代の経営陣として強固なスクラムを組み、自律的に組織を引っ張っていく体制を一日も早く確立したい」

 ―どのような将来像を描いていますか。

 「お客さまはもちろん、社員、そして社員の家族の満足度が高い企業を目指している。新工場の事務所棟には食堂や休憩室、交流スペース、研修室などを設けて、社員が生き生きと働ける環境を整える。福利厚生もさらに充実させていく方針だ。最先端の環境で、社員が誇りを持って働き、地域社会からも必要とされる企業であり続けたい。次代を担う強い組織を築き、かかわるすべての人を幸せにする企業へと進化を遂げたい」

 「開放的な休憩室や、部署の垣根を越えて雑談が生まれるような交流スペースは、社員のリフレッシュだけでなく、新たなアイデアや社内コラボレーションを生み出す最高の土壌になると確信している。結婚や育児、介護といった人生のライフステージが変わっても、誰もがキャリアを諦めることなく働き続けられるよう、柔軟な勤務制度や独自の福利厚生メニューの導入も進めたい。ご家族の方々から『お父さん、お母さんがこの会社で働いてくれて本当に良かった』『自分も将来、この会社に入りたい』と言ってもらえるような企業にしたい」

【企業概要】株式会社徹工業…本社・久喜市桜田5-21-1。2001年3月に設立。資本金は1000万円、従業員数は85人(2026年年9月末現在)。ステンレス精密板金、製缶加工、樹脂加工などを手がける。久喜市、白岡市、加須市に工場を開設している。

【埼玉県の経済をけん引する企業トップに焦点を当てた、新インタビュー連載「埼玉発・企業トップが語る成長戦略」がスタート。毎週火曜日と金曜日の週2回、電子版で配信する。激変する経営環境のなかで、いかにして次の成長カーブを描いているのか。最前線で舵を取る経営者の戦略に迫る】

=埼玉新聞WEB版=

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