松本零士さん没後3年…所沢で19日から原画展 作品の世界を体感する企画展も開催中 「松本零士の娘」が重荷だった長女と最も間近で見てきた妻、家族だからこそ知る素顔を語る
「さらばメーテル、さらば999(スリーナイン)」―。所沢市東所沢の角川武蔵野ミュージアムに無数の星が瞬き、別れの言葉が響く。しかし、その旅は今も続いている。漫画家松本零士さん(1938~2023年)の作品世界を体感する「銀河鉄道999 THE GALAXY EXPERIENCE」が現在開催中。19日から始まった原画展「松本零士展 創作の旅路」に合わせ、長女で零時社代表の松本摩紀子さんと、妻で漫画家の牧美也子さんが本紙の取材に応じ、家族だからこそ知る素顔や創作への姿勢を語った。
■父なら「たまげた!」
漆黒の空間に壁から床まで映像が広がり、オレンジ色に浮かび上がった999号が縦横無尽に疾走する。「もし、この場所に父がいたら? きっとひと言、『たまげた!』。心の中は常にわくわく、少年のような人でしたから」と摩紀子さん。「冷んやりとした空気や風の流れ。自分も99番線のホームに立ち、物語の中に入り込んだみたい」と、その没入感に目を見張った。
■妻が語る素顔
少女漫画界の先駆者である妻の牧さんは、零士さんの創作を最も間近で見てきた。「作品に必要なことは、締め切りぎりぎりまで徹底的に調べていましたね。でも、手を尽くした後は『じたばたしても、なるようにしかならない』。くよくよと悩まない人でした」。同じ仕事場に机を並べ、それぞれの作品を描くのが一家の日常。一人娘の摩紀子さんも、その暮らしの中で育った。
牧さんは「今はどんな小さなピースも重なり合い、全ての思い出につながっている」「友達のようでもあり、その生活はとても楽しかった」と、過ぎた日々を懐かしむ。
■「自分にしかできない」
19日に開幕した原画展では、14歳ごろの作品から「男おいどん」「銀河鉄道999」「宇宙海賊キャプテンハーロック」など、300点以上の原画を展示。1954(昭和29)年のデビュー後、初公開となる創作ノートや愛用品の数々を通して、七十数年の歩みをたどる。
「実は、999の原画がどうしても見つからなくて。真っ青になりながら、家中を捜し回ったんですよ」と摩紀子さん。「編集の方用に布団が収納してあったはずの押し入れを開けると、ぎっしり詰まった複数の原稿が。あのときは本当にうれしかった」とほほ笑む。かつては「『松本零士の娘』が重荷なこともあった」が、徐々に「この仕事ができるのは、自分しかいない」と覚悟を決めた。
79(昭和54)年公開の劇場版「銀河鉄道999」から約半世紀、新作劇場アニメの制作が今年7月、発表された。体験展も「あの旅は、まだ続いている。」をサブタイトルに展開。「永遠の命か、限りある命か」など、零士さんが作中に描いてきた問いは人工知能(AI)による技術革新が進む中での現実社会と重なる。
「表舞台に立つのは苦手だけれど、父の口癖だった『自分たちはDNAを運ぶ舟なんだ』―。この言葉を胸に、物語に宿る『命』を未来につなげていきたい」。零士さんの作品とともに、摩紀子さんの旅路はこれからも続く。
午前10時~午後6時(入館は同5時半)。火曜休み(祝日は開館)。原画展は10月26日、体験展は11月23日まで。










