埼玉新聞

 

埼玉東部を流れる「葛西用水」世界かんがい施設遺産に 17世紀から水路を変えながら発展 江戸の農業を支えた約80キロの水利システム 見沼代用水、備前渠用水路に続き県内3例目

  • 越谷市の葛西用水瓦曽根溜井周辺。越谷市役所近く上空をドローンにより撮影。右上が越谷市役所、右側を流れる川が元荒川、平行して左側に葛西用水が溜井に流れ込み、水面にサンショウモが発生している=19日、越谷市の国内測量設計株式会社加藤祐輔さん撮影、提供

    越谷市の葛西用水瓦曽根溜井周辺。越谷市役所近く上空をドローンにより撮影。右上が越谷市役所、右側を流れる川が元荒川、平行して左側に葛西用水が溜井に流れ込み、水面にサンショウモが発生している=19日、越谷市の国内測量設計株式会社加藤祐輔さん撮影、提供

  • 久喜市と幸手市の市境を流れる葛西用水路と琵琶溜井。右側は久喜市栗原の葛西用水琵琶溜井記念館

    久喜市と幸手市の市境を流れる葛西用水路と琵琶溜井。右側は久喜市栗原の葛西用水琵琶溜井記念館

  • 越谷市の葛西用水瓦曽根溜井周辺。越谷市役所近く上空をドローンにより撮影。右上が越谷市役所、右側を流れる川が元荒川、平行して左側に葛西用水が溜井に流れ込み、水面にサンショウモが発生している=19日、越谷市の国内測量設計株式会社加藤祐輔さん撮影、提供
  • 久喜市と幸手市の市境を流れる葛西用水路と琵琶溜井。右側は久喜市栗原の葛西用水琵琶溜井記念館

 埼玉県行田市の利根川から県東部を南下し東京都足立区に至る「葛西用水」(葛西用水路土地改良区・幸手市戸島2丁目)が21日、世界かんがい施設遺産に認定された。県内では見沼代用水、備前渠(きょ)用水路に次いで3番目。17世紀から地域の農業と暮らしを支えてきた葛西用水が、世界的評価を受けた。関係者は「葛西用水の水利システムが評価され、大変光栄」と喜んでいる。

 葛西用水は見沼代用水、明治用水(愛知県)と並ぶ日本三大農業用水の一つ。江戸時代には、100万人都市・江戸の北東部に広がる農地に用水を供給した。開削当時、幹線の有効延長は約80キロにも及んだとされる。埼玉県東部が一大農業地帯として発展する礎を築いた。

 また葛西用水は旧河道を利用した「溜井(ためい)」、上流域から流れる排水を再利用する「反復利用」などが特徴。長い歴史を経てなお地域の自然を生かした水利システムが、今に引き継がれている。

 世界かんがい施設遺産は、歴史的・技術的・社会的に価値のあるかんがい施設を認定、登録する制度。歴史的なかんがい施設の保全や、価値の継承、地域づくり、学習への活用が期待される。

 葛西用水路土地改良区は世界かんがい施設遺産認定に向け、昨年から準備を進めてきた。今年に入り国内審査を経て、国際委員会に世界かんがい施設遺産の候補施設として申請。審査を経て、21日に正式に認定された。

 葛西用水路土地改良区は、ホームページで世界かんがい施設遺産認定を紹介。戸張清所長は「江戸時代初期から溜井や反復利用という技術を駆使して、段階的に整備された葛西用水の水利システムが評価されたことで認定が決定した。大変光栄なこと」とコメントしている。

■時代を経て憩いの場にも

 時代を経て先人が築いた一大水利システム「葛西用水」が21日、「世界かんがい施設遺産」に認定された。葛西用水は17世紀から現在まで長い年月をかけて水路の変遷を重ね、周辺は地域の憩いの場としても活用されている。

 葛西用水を長年研究してきた歴史地理学会会員の橋本直子さん=さいたま市=は、世界かんがい施設遺産認定に熱い思いを寄せた。「葛西用水は、利根川、江戸川、元荒川などの河川と地形環境を巧みに利用した先人たちの成果」と誇らしげに話した。

 葛西用水の歴史は複雑だ。当初は綾瀬川から取水し、利根川、荒川の瀬替えに伴い水路を変え、下流から段階的に上流河川に水源を求めた。利根川の水害を機に1719(享保4)年、利根川から取水していた幸手用水を活用。最下流域で亀有溜井(ためい)を廃し、小合(こあい)溜井(現東京都水元公園)を設置し、葛西用水体系が完成する。

 琵琶溜井から松伏溜井までは古利根川を経るなど自然河川を活用。現在は行田市の利根大堰(ぜき)から取水するなど、時代の変化とともに水路が変遷してきた。

 葛西用水の魅力の一つは「溜井」。琵琶溜井(久喜・幸手市)、松伏溜井(越谷市・松伏町)、瓦曽根溜井(越谷市)、小合溜井は現在も葛西用水を象徴する要所になっている。かんがい機能であるだけでなく、水辺空間として地域住民に親しまれている。

 橋本さんは「首都江戸・東京の地域経済を支えた主幹用水として、今後も変容し続ける地域社会に多大な効果をもたらすことに期待したい」としている。

 県内で葛西用水路土地改良区が管轄する自治体は加須市など11市町。用水周辺では、自治体や関係団体による水辺空間の活用が進む。久喜市では、住民が毎年葛西用水両岸約10キロにコスモスやポピーを植栽。草加市稲荷地区では、毎春「さくら祭り」が開かれるなど市民がにぎわう場になっている。

 葛西用水路土地改良区は「葛西用水は現在も県東部地域のかんがいを担うとともに、地域水環境の保全にも大きな役割を果たしている。今後も関係地域が一体となって、発展・継承していきたい」としている。

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