埼玉新聞

 

原爆の惨禍を朗読 行田の和保さん、全国巡回目指す 「平和への願いを届けたい」

  • 峠三吉の詩を朗読する和保葉子さん=9日、行田市城西の持田公民館

    峠三吉の詩を朗読する和保葉子さん=9日、行田市城西の持田公民館

  • 【地図】行田市(背景薄緑)

    行田市

  • 峠三吉の詩を朗読する和保葉子さん=9日、行田市城西の持田公民館
  • 【地図】行田市(背景薄緑)

 行田市に活動拠点を置く朗読サークル「カサンドラ朗読プロジェクト」を主宰する同市の俳優で朗読家の和保葉子さん(61)が、原爆の惨禍を伝える企画を立ち上げた。詩人峠三吉(1917~53年)の「原爆詩集」を朗読し、平和を願う歌を合唱する会を各地で催す構想だ。今夏、市内でプレイベントを始めた。

■峠三吉の作品を群読

 長崎原爆の日の9日夜、行田市城西の持田公民館に和保さんと来場者15人の群読する声が響いた。「ちちをかえせ ははをかえせ」。峠が作った原爆詩集の「序」だ。

 やがてホールの照明が落とされ、和保さんが一人芝居のように作品を次々と朗読。張り詰めた空気を切り裂き、犠牲者たちが演者の肉体を通して、“あの日”の被爆地から訴えかけてくるようだった。和保さんは「彼の詩は赤裸々だけれど、美しいと感じさせてくれる。そぎ落とされた鋭さがありながら、怒りや愛が込められた描写力、構成力は素晴らしい」と評する。

■私の人生変えた戦争

 本庄市出身の和保さんは、県立熊谷女子高校を卒業すると上京。俳優の養成所などを経て、小劇場を中心に舞台で活動した。演技の世界をいったん離れ、十数年間は司会業をしていたが、2011年の東日本大震災で被災地を訪れてボランティアに携ったのがきっかけとなり、「自分が本当にやりたいことをしよう」と俳優に復帰。実家がある行田市へ戻った20年からは、朗読にも取り組みだした。

 高校時代、日本がかつて足を踏み入れた太平洋戦争が、自身の人生も変えてしまうと感じた経験がある。米国に留学したいと伝えたところ、父が「敵国には行かせられない」と猛反対。断念せざるを得なかった。父が深く慕った兄が、ニューギニア島で戦死していたのだ。和保さんは「昔あった戦争なのに、私の将来にも関わってくるんだと思い知った」と振り返る。

■核保有国でも公演を

 東京都内の平和資料館で一人芝居をする女優の演技に触れるなどし、朗読で全国を巡回したいと考えるようになったという。和保さんは「この年齢だからこそ、伝えられるものがある。自分の活動を生かして、平和への願いを届けたい」と行動を始めた。

 和保さんは現在、合唱団員やピアノ伴奏者、舞台スタッフなどを募集している。運営費の支援も欠かせない。中核メンバーのほか、飛び入り参加者も受け入れ、「バトンをつなぐ形で行田から近隣のまちへ、そして遠くに広げていければ」と言う。和保さんは「何十万もの人々が一瞬で消えてしまった原爆を、決して忘れてはいけない。いつかは広島や長崎で公演し、アメリカをはじめとする核保有国にも行くのが目標」と、ライフワークに据える覚悟だ。

 今後の開催は、市内の南河原公民館(29日)、北河原公民館(9月12日)、太田公民館(同27日)、須加公民館(10月3日)、太井公民館(同17日)、荒木公民館(同31日)を予定している。いずれも午後2時開演。問い合わせは、カサンドラ朗読プロジェクトのメール(cppyoko2057@gmail.com)へ。

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