埼玉新聞

 

頭が真っ白、死を目の前に 闘病で「骨のがん」克服 J2大宮の塚本さん振り返る 治療乗り越えられた理由

  • 「病気と闘う子どもたちに勇気届けたい」と話す大宮アルディージャクラブアンバサダーの塚本泰史さん(右)と女優の友寄蓮さん=さいたま市浦和区の埼玉会館

 献血への理解と協力を求める催し「彩の国さいたま愛の血液助け合いの集い」が7月30日、さいたま市で行われ、J2大宮アルディージャ・クラブアンバサダーで骨のがん「骨肉腫」を克服した塚本泰史さん(34)が「僕が頑張ることで、病気と闘う子どもたち、患者さんに少しでも勇気を届けたい」と話し、闘病を支えた周囲への感謝や、健康に生きることの大切さ、ありがたさについて述べた。

 塚本さんは川口市出身。2008年に大宮アルディージャに入団し、ディフェンダーとして活躍していた10年、骨肉腫と判明し、右脚に人工関節を移植する手術を受けた。

 「病気になり、人の優しさ、温かさを知り、人は一人では生きられず、皆に支えられて生きていると強く思った」と話す塚本さん。骨肉腫と医師から告げられた瞬間は「頭が真っ白で何も考えられない状態だった」という。

 そして「大好きなサッカーを諦めたくなかった。がんイコール死、というイメージはあった。死を目の前にして、生きたいと思い、手術の道を選んだ」と、当時の心中を語った。

 手術3日前の試合では、満員のスタジアムに当時の塚本さんの背番号「2」の横断幕が掲げられ、選手、サポーターも後押し。当時を振り返り「今の自分がいるのは応援してくださった方々のおかげ」と感謝の言葉を述べた。

 手術やつらい治療を乗り越えられた理由は「家族の存在」だったという。特に兄は「僕の脚と交換できないか」と話すほど塚本さんを案じた。

 最後に「今、朝起きて『おはよう』、寝る前に『おやすみ』と言えることに幸せを感じている」と健康の大切さを強調。「命がある。無駄のないよう生きたい。同じ病気で闘う子どもや患者に勇気を与えたい」と力強く話した。

 進行を務めた女優の友寄蓮さん(24)も自身の急性リンパ性白血病の闘病体験を紹介。輸血治療の経験を踏まえ、「私の体の中に流れる血液は多くの方の温かさ。私たちは献血ができない。皆さんの献血で、誰かの明日の命をつなげるお手伝いをしてほしい」と献血の大切さを呼び掛けた。

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