埼玉新聞

 

イラン情勢の緊迫化で…品薄状態の石油系断熱材、4割上がった取引価格 注目集まる、木質繊維系の断熱材 原材料の8割が新聞紙…埼玉・飯能の工場で生産「環境にも家計にもやさしい製品」

  • 古紙回収された新聞紙をリサイクルした「デコスファイバー」

    古紙回収された新聞紙をリサイクルした「デコスファイバー」

  • 赤外線サーモカメラでの実証実験。デコスファイバーを吹き込んだ箇所は高い蓄熱性を発揮。熱伝導が遅いため、壁の表面温度は低い

    赤外線サーモカメラでの実証実験。デコスファイバーを吹き込んだ箇所は高い蓄熱性を発揮。熱伝導が遅いため、壁の表面温度は低い=飯能市のデコス関東工場

  • 【地図】飯能市(背景薄緑)

    工場のある飯能市の位置

  • 古紙回収された新聞紙をリサイクルした「デコスファイバー」
  • 赤外線サーモカメラでの実証実験。デコスファイバーを吹き込んだ箇所は高い蓄熱性を発揮。熱伝導が遅いため、壁の表面温度は低い
  • 【地図】飯能市(背景薄緑)

 飯能市茜台の大河原工業団地にあるリサイクル製品の製造工場。うず高く積まれた古新聞が次々と専用の機械に投入されていく。断熱材製造のデコス(山口県下関市)は東日本エリアの一大供給拠点として2013年、飯能市内に関東工場を建設。原材料の8割に新聞紙を使ったセルロースファイバー断熱材「デコスファイバー」を生産している。イラン情勢の緊迫化で石油系断熱材は品薄状態。取引価格も4割ほど上がっており、木質繊維系の同社製品に注目が集まっている。

■大気中のCO2を削減

 同社は1974年、山口、福岡両県の地域ゼネコン「安成工務店」(山口県下関市)のグループ企業として設立。当初は不動産事業を主力にしたが、96年に断熱材事業にかじを切った。

 デコスファイバーは新聞紙を主原料に、太さや形状の異なる木質繊維を絡め合わせることで、微細な空気層を内部につくり出す。室内の湿気が高い時は水分を吸収し、低い時は外部に吐き出す特徴を持つ。難燃剤も添加されており、表面は焦げても内部まで燃えにくい構造。優れた断熱性や吸音性に加え、シロアリ被害やカビの発生も抑えてくれる。

 木造住宅で最も多く使われているマット状の断熱材は、設置箇所の形状によって隅々まで行き渡らず、本来の断熱効果が得られない場合もある。一方、綿状のデコスファイバーは手の届きにくい箇所にまで充填(じゅうてん)できるため、内部結露のリスクを軽減、建物の長寿命化にもつながるという。一般社団法人サステナブル経営推進機構(SuMPO)は昨年、デコスファイバーを国内製造の断熱材では初めて、大気中の二酸化炭素(CO2)を固定化する(=実質的に減らす)カーボンネガティブ製品であると公表した。

■被災地の仮設住宅で採用

 同製品は製造過程で熱(熔解・乾燥)や水(洗浄・冷却)を一切使わないため、エネルギー消費量もグラスウール製品比で最大50分の1程度に低減。ゼロエネルギー住宅(ZEH)やサステナブル建築に有効な材料として期待されている。

 初期費用はやや高めでも光熱費などの長期ランニングコストでみれば、「環境にも家計にもやさしい製品」と同社営業担当者。今後、流通量が増えればさらに価格は下がるため、「消費者への認知度向上や販促にも力を入れたい」と話す。

 これまで累計で約4万2千棟の住宅・施設で採用。日本産業規格(JISA9523)認証断熱材として能登半島地震の被災地、石川県輪島市や珠洲市などの木材応急仮設住宅計623戸でも使われている。

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