埼玉新聞

 

看護師不足が深刻化 埼玉の秩父地域 専門学校閉校で要望書、地元の看護師会 地域医療が崩壊の危機にある現状を説明

  • 秩父1市4町の首長に看護師確保の要望書を提出する、秩父地域看護師会の新井寛子さん(中央)=秩父市役所

    秩父1市4町の首長に看護師確保の要望書を提出する、秩父地域看護師会の新井寛子さん(中央)=秩父市役所

  • 地域医療を支えている秩父市立病院の看護師=13日、秩父市桜木町

    地域医療を支えている秩父市立病院の看護師=13日、秩父市桜木町

  • 秩父1市4町の首長に看護師確保の要望書を提出する、秩父地域看護師会の新井寛子さん(中央)=秩父市役所
  • 地域医療を支えている秩父市立病院の看護師=13日、秩父市桜木町

 秩父医療圏の看護師らで構成する秩父地域看護師会が、地域の看護師確保と医療・介護・福祉の維持に関する要望書を、秩父市、横瀬、皆野、長瀞、小鹿野町の首長に提出した。同会会長で秩父市立病院看護部長の新井寛子さんは、少子化高齢化によって看護師の不足が深刻化し、地域医療が崩壊の危機にある現状を説明。秩父看護専門学校(同市熊木町)が2029年3月末での閉校が決まり、地域内の新卒入職者が見込めなくなることから、「行政と関係機関が一体化し、看護師確保の支援策を早急に検討してほしい」と訴えた。

 要望書提出は秩父市役所で行われ、同会の看護師、学校、介護福祉施設関係者8人と、秩父1市4町の首長が出席。同会は1月末~2月20日の期間、秩父地域の医療従事者や住民から2万7781人分の署名を集め、地域の将来を左右する喫緊の課題の解決へ向けた要望書を作成した。

 要望事項は、「看護学生に対する修学支援・奨学金制度の立ち上げ」「圏域外から看護師を招聘(しょうへい)するための移住・定着に向けた生活支援の支給」「医療現場の労働環境改善への財政的支援」「地元の若者への看護職PR活動の強化」の4点。

 要望書を受け取った同市の清野和彦市長は「各首長が署名の数を重く受け止めている。29年の秩父看護専門学校の閉校により、看護師確保の取り組みは地域住民の安心安全な暮らしと健康を守るための最重要課題であると認識している。今回の要望を参考に、意見交換を慎重に重ねていく」と話した。

■地元の若い人材不可欠

 一般病床165床、計9診療科目の秩父市立病院(同市桜木町)には3月現在、108人の正職員看護師が在籍。うち約30%が秩父看護専門学校の卒業生だ。新井さんは「看護師の新卒採用は、ここ15年以上、秩父看護専門学校出身者のみが続いている。地域外の看護学校卒業生を秩父圏内に呼び込むのは難しく、今後は新人だけではなく、幅広い中途採用の募集が必要になる」と深刻に語る。

 同校は、1998年に秩父郡市医師会によって設立された、三年制の秩父地域唯一の看護師養成学校。少子化に伴う学生数減少などにより、2027年度以降の新規入学生の募集を停止した。26年度の学生数は計40人。同校関係者は「特に、コロナ禍以降の入学希望者の減少が目立っている。医療従事者の過酷な勤務環境が報道されるようになり、若者の看護師志望者が少なくなってしまっている印象」と説明する。

 若者たちに看護師の魅力を知ってもらおうと、秩父医療圏の各病院では、地元小学生などを対象にした看護師体験や講演会、未就労者に向けた看護師の再就業技術講習会などを行っているが、「病院規模では、できることが限られてしまい、なかなか効果が見られない」と新井さん。秩父地域看護師会は各市町に、「地元の小中学生が地域医療を志すよう、キャリア教育や体験学習の機会を行政主導で継続的に提供してほしい」と求めている。

 秩父医療圏は25年度以降、夜間の重症患者を曜日交代で受け入れる「2次救急輪番制」を市立病院と皆野病院の2病院のみで維持している。「50~60代になると、夜間まで働くのが体力的に厳しくなるため、若者の力が何としても必要」

 新井さんは「看護師は、医療機関だけではなく、保育、福祉、介護、高齢者施設など、さまざまな場面で必要とされる地域を支える大事な仕事。地元の若者に、もっと興味を持ってほしい」と、切に願っている。

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