埼玉新聞

 

埼玉には33カ所の「交通空白地区」が存在 県内15市町村に 地域公共交通の再編は各市町村の重要課題 担い手の“争奪戦”が激しさを増すことも

  • 県内市町村の地域公共交通計画の策定状況

    県内市町村の地域公共交通計画の策定状況

  • 県内市町村の地域公共交通計画の策定状況

 国の交通空白解消本部が2025年5月に公表した調査結果によると、埼玉県内には15市町村、33カ所の「交通空白地区」が存在する。地域交通に困りごとを抱え、解消に向けた対応を必要としていることが空白の定義とされる。国土交通省関東運輸局の川村英輝首席運輸企画専門官は「広範囲で交通機関がないケースもあれば、時間的、局所的空白もある」と説明する。

 地域公共交通の再編は各市町村の重要課題で、24年度から再編を進める行田市では、事前に利用日時や人数を予約し、人工知能(AI)がコースを設定する乗合型AIオンデマンド交通事業を25年1月から開始。利用者が少ない市内循環バス3路線を廃線し、デマンドタクシーや免許証自主返納者支援との統合・転換を図っている。

 広域連携を含む交通ネットワークの再設計は、大野元裕知事が掲げるコンパクトなまちづくりにも通じる。県は年度内に地域公共交通基本方針を策定する予定で、県交通政策課の吉井洋紀課長は「地域公共交通計画の未策定団体に働きかけ、交通空白の解消に資する取り組みを支援していく」と力を込める。

■778人不足見込む

 働き方改革に伴う24年4月の法改正により、バス運転手の時間外労働は年960時間以内、一日の休息期間も原則11時間以上(最低9時間)に厳格化された。日本バス協会は、22年水準の輸送サービスを維持するにはバス運転手12万9千人が必要で、30年度末に3万6千人不足すると試算している。

 25年度に県交通政策課が行った、事業者アンケートの結果から試算した県内で必要なバス運転手数は3430人。同協会と同じ減少幅で試算した場合、30年度に778人の不足を見込む。公共交通や運送業を担う若手人材の即戦力化を支援するため、国は22年5月、19歳以上かつ短い免許経歴でも、特定の講習を修了すると二種免許などを取得できる「受験資格特例教習」を新設した。

 県が県議会に提案している26年度一般会計予算案には、新規施策として業界団体を通じた特例教習などの補助に593万8千円を計上。新年度予算に先立って可決した一般会計補正予算にも、デジタル技術を活用した交通事業者の生産性向上に資する取り組みに対して3億9500万円を充てた。

■市町村またぐ事例も

 三郷市北西部から吉川市南側地域の路線バス5路線の廃止を受け、両市は新三郷駅西口と吉川駅南口を結ぶ新たなコミュニティーバス運行を4月1日から予定している。運行事業者となるマイスカイ交通(三郷市)の白石広一社長は「人手不足で増便に抵抗はあったが、市の強い要請があった。助成制度は多いほどありがたい」と実感を込める。

 24年度交通政策白書によると、大手を含む全国の乗合バス事業者の73・7%が赤字事業者とされる。従来バス事業者の運賃改定は、補助金などの公的支援を受けてもなお、赤字が解消されない場合などに行われていた。待遇改善による運転者確保や持続可能な経営を促す措置として、国は23年12月、赤字補填(ほてん)の補助金を収入額への計上から除く算定基準や、将来の設備投資などの審査方法を見直した。

 担い手の“争奪戦”が激しさを増すことも予想され、県議会の美田宗亮議員(自民、三郷市)は11日の予算特別委員会で、移住支援と合わせてバス運転手を呼び込む他県の事業を紹介。「団体や会社ではなく人に投資をしていただきたいという声が上がっている」と、直接届く支援の重要性を訴えた。

ツイート シェア シェア