埼玉新聞

 

「3人を返して」「死刑に」声を詰まらせる次女…父死亡、おの2本たたきつけられる 母と長女も襲われ死亡 死刑求刑された男、一切表情を変えず関与を否定 あす地裁で判決、責任能力が争点に

  • 事件のあった男性宅。今でもコーヒーや花が供えられていた

    事件のあった男性宅。今でもコーヒーや花が供えられていた=11日、飯能市美杉台

  • ブルーシートで覆われた被害者宅。一帯は規制線が張られ続け、警察車両も止まっている=2023年2月16日午前、飯能市美杉台

    ブルーシートで覆われた被害者宅。一帯は規制線が張られ続け、警察車両も止まっている=2023年2月16日午前、飯能市美杉台

  • 男女3人が殺害された住宅周辺を捜査する警官ら。現場は閑静な住宅街で、近隣には中学校(写真奥)もある=2022年12月25日午前、埼玉県飯能市美杉台

    男女3人が殺害された住宅周辺を捜査する警官ら。現場は閑静な住宅街で、近隣には中学校(写真奥)もある=2022年12月25日午前、埼玉県飯能市美杉台

  • 夫婦と長女の3人が殺害された現場の住宅=2023年1月23日午前、飯能市美杉台

    夫婦と長女の3人が殺害された現場の住宅=2023年1月23日午前、飯能市美杉台

  • 【地図】飯能市

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  • 事件のあった男性宅。今でもコーヒーや花が供えられていた
  • ブルーシートで覆われた被害者宅。一帯は規制線が張られ続け、警察車両も止まっている=2023年2月16日午前、飯能市美杉台
  • 男女3人が殺害された住宅周辺を捜査する警官ら。現場は閑静な住宅街で、近隣には中学校(写真奥)もある=2022年12月25日午前、埼玉県飯能市美杉台
  • 夫婦と長女の3人が殺害された現場の住宅=2023年1月23日午前、飯能市美杉台
  • 【地図】飯能市

 2022年12月、飯能市の住宅で住民の夫婦と帰省中だった長女の親子3人が殺害された事件で、殺人、非現住建造物等放火、銃刀法違反の罪に問われた、無職の男(43)の裁判員裁判の判決が16日、さいたま地裁(井下田英樹裁判長)で言い渡される。男は公判で、「知らないことです」と起訴内容を否認。検察側が「何の落ち度もない3人の尊い命が奪われ、結果は重大」と死刑を求刑し、弁護側は無罪を主張した。男が犯人かどうかや刑事責任能力が争点で、裁判所の判断が注目される。

 事件は22年12月25日の早朝に発生した。飯能市美杉台4丁目の住宅で、米国籍の男性=当時(69)=と妻=同(68)、長女=同(32)=がおので殴打され、殺害されたとされる。

 男は男性宅から約60メートル離れた場所に1人で住んでいた。事件の半年以上前には男性の車に傷を付けた器物損壊容疑で逮捕され、その後不起訴となっていた。男性は代理人を通じて、男の母に損害賠償約126万円を請求し、支払いを巡るトラブルに発展した。

 事件から3年以上が経過し、今年2月16日から6回にわたる公判が開かれた。男が当時、精神疾患を罹患(りかん)していたことに争いはなく、男が犯人であるかどうか、犯人であったとして犯行当時責任能力があったかどうかが争点となった。

 検察側は男性方に設置された防犯カメラの映像などから、犯人であることに疑いはないと説明。責任能力については、犯行の半年以上前から凶器を準備して計画性があり、犯行時に防犯カメラの配線を切断するなどしていたことから、「自身の行為が違法だと認識しており、精神疾患の影響は限定的だった」と、責任能力があったとして死刑を求刑した。

 弁護側は、男が防犯カメラの映像について「似ている人が写っている」と述べたことなどから「男が犯人であるか慎重に検討する必要がある」と主張。仮に犯人であったとしても、「身の回りの状況を被害的に認識する傾向にある」とする精神鑑定の結果を踏まえ、「現実の出来事と妄想が混同し、報復感情が強まった。精神疾患の圧倒的な影響があり、心神喪失だった」と無罪を主張している。

 公判で男は生い立ちや日常生活の質問には応じた。一方、事件の話になると、「私を犯人にしたいと思っている人がいる」「(犯行当時は)寝ていた」などと犯行への関与を全て否定。器物損壊事件について「今でも示談金を返してもらいたい。釈放されたら示談金を持っている方に請求します」と述べた。

 被害者参加制度を利用し、妻の弟と妹、男性一家の次女の3人が意見陳述に臨んだ。「ただ3人を返してほしい」「死刑にしてください」と声を詰まらせながら語るも、男は一切表情を変えずに聞いていた。

 男は最終意見陳述で「殺人事件の犯人と器物損壊事件の犯人は別人なのでは」などと述べた。最後まで被害者に対する言及はなかった。

■どんな事件だった 刑事責任能力を問えると判断(以下2023年12月24日配信、起訴時の記事)

 2022年12月、飯能市の住宅敷地内で住民の夫婦と帰省中の長女の計3人が殺害された事件で、さいたま地検は2023年12月21日、殺人や非現住建造物等放火、銃刀法違反の罪で、近所の無職の男(41)=同市美杉台4丁目=をさいたま地裁に起訴した。裁判員裁判で審理される。

 地検は男の事件当時の精神状態を調べる鑑定留置を2023年2月13日から2度目の延長を経て、8月4日まで実施。さらに同10日から2度目を始め、1度の延長を挟んで12月15日に終えていた。地検は計10カ月に及んだ鑑定留置の結果、男の刑事責任能力を問えると判断した。

 起訴状などによると、2022年12月25日午前7時過ぎ、飯能市美杉台4丁目の住宅敷地内で米国籍の男性=当時(69)=に対し、おの(刃体の長さ約7・5センチ)の刃を頭部などに複数回たたきつけた上、別のおの(同約9・8センチ)で後頸部(けいぶ)などを複数回殴打し、死亡させた。さらに、同おので妻=同(68)=と長女=同(32)=の頸部などを複数回殴って殺害した後、住宅内に灯油をまき、火を放って1階リビング天井などを焼損(面積計約22・8平方メートル)させたなどとされる。

 地検は男の認否を明らかにしていないが、8月10日に非現住建造物等放火と銃刀法違反の疑いで追送検された際の県警の調べには、殺人容疑を含め全ての容疑について「やっていない」と否認。捜査関係者によると、鑑定留置終了後の県警の調べに対しても、これまでと同様に容疑を否認していたという。動機に関しても一切語っていない。

 男は、昨年1月に男性方に止められていた車などに投石し、傷を付けたとして器物損壊容疑で現行犯逮捕された。男性方では一昨年8~12月にも車や門扉を傷つけられる被害が計6回あり、その後、昨年2月までに同容疑で2度再逮捕されたが、いずれも供述を拒み続け、嫌疑不十分で不起訴となっていた。

 事件発生から、間もなく1年。鑑定留置が計10カ月間にわたって実施された後の今回の起訴を受け、男の担当弁護士は「被疑者段階で鑑定留置を2回行うことは担当事件の中では初めて。おそらく全国的にも異例中の異例なのではないか。鑑定書を確認した上で、これからの方針を検討したい」と話している。

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