夫死亡、おの2本たたきつけられる…妻と娘も死亡 頭・首を狙った近所の男に死刑求刑「防カメ配線を切断、警察が来てドアをふさぎ違法だと認識」 弁護士は無罪主張「男は心神喪失、犯人なのか」 男「別人かと」
2022年12月、飯能市の住宅で住民の夫婦と帰省中だった長女の親子3人が殺害された事件で、殺人、非現住建造物等放火、銃刀法違反の罪に問われた、同市の無職男(43)の裁判員裁判の論告求刑公判が26日、さいたま地裁(井下田英樹裁判長)で開かれ、検察側は死刑を求刑した。弁護側は無罪を主張し、結審した。判決は3月16日。
公判では男が事件当時、精神疾患を罹患(りかん)していたことに争いはなく、男が犯人であるか、男が犯人であったとして事件当時に責任能力があったかが争点となっていた。男はこれまで「知らない」「(事件当時は)寝ていた」などと犯行への関与を否認している。
検察側は論告で、防犯カメラの映像や男宅から発見された衣服の血痕などから「犯人である合理的疑いが残る余地はない」と説明。犯行の半年以上前から凶器を準備し、犯行時には防犯カメラの配線を切断したり、犯行後には自宅へ来た警察に対してドアをふさぐなど、「自身の行為が違法だと認識しており、精神疾患が与えた影響は限定的だった」とし、責任能力があったと主張した。
その上で、「何の落ち度もない3人の尊い命が奪われ、結果は言うまでもなく重大」と非難。被害者への慰謝もなく犯行について否認を続けたことについて「更生の可能性を見いだすことはできず、極刑を選択すべき」とした。
弁護側は「男が事件の犯人なのか慎重に検討すべき」と犯人性を否定。責任能力については、精神鑑定の結果を基に、「現実の出来事と妄想が混同し、報復感情が強まった。精神疾患の圧倒的な影響があり、心神喪失状態だった」と無罪を主張した。
男は最終意見陳述で「殺人事件の犯人と器物損壊事件の犯人は別人ではないかと思いました」などと述べた。
起訴状などによると、男は22年12月25日午前7時10分から25分ごろまでの間、飯能市美杉台4丁目の住宅で、米国籍の男性(69)と妻(68)、長女(32)=いずれも当時=の頭や首などをおので殴るなどして殺害。被害者宅に放火したなどとされる。
■どんな事件だった 刑事責任能力を問えると判断(以下2023年12月24日配信、起訴時の記事)
2022年12月、飯能市の住宅敷地内で住民の夫婦と帰省中の長女の計3人が殺害された事件で、さいたま地検は2023年12月21日、殺人や非現住建造物等放火、銃刀法違反の罪で、近所の無職の男(41)=同市美杉台4丁目=をさいたま地裁に起訴した。裁判員裁判で審理される。
地検は男の事件当時の精神状態を調べる鑑定留置を2023年2月13日から2度目の延長を経て、8月4日まで実施。さらに同10日から2度目を始め、1度の延長を挟んで12月15日に終えていた。地検は計10カ月に及んだ鑑定留置の結果、男の刑事責任能力を問えると判断した。
起訴状などによると、2022年12月25日午前7時過ぎ、飯能市美杉台4丁目の住宅敷地内で米国籍の男性=当時(69)=に対し、おの(刃体の長さ約7・5センチ)の刃を頭部などに複数回たたきつけた上、別のおの(同約9・8センチ)で後頸部(けいぶ)などを複数回殴打し、死亡させた。さらに、同おので妻=同(68)=と長女=同(32)=の頸部などを複数回殴って殺害した後、住宅内に灯油をまき、火を放って1階リビング天井などを焼損(面積計約22・8平方メートル)させたなどとされる。
地検は男の認否を明らかにしていないが、8月10日に非現住建造物等放火と銃刀法違反の疑いで追送検された際の県警の調べには、殺人容疑を含め全ての容疑について「やっていない」と否認。捜査関係者によると、鑑定留置終了後の県警の調べに対しても、これまでと同様に容疑を否認していたという。動機に関しても一切語っていない。
男は、昨年1月に男性方に止められていた車などに投石し、傷を付けたとして器物損壊容疑で現行犯逮捕された。男性方では一昨年8~12月にも車や門扉を傷つけられる被害が計6回あり、その後、昨年2月までに同容疑で2度再逮捕されたが、いずれも供述を拒み続け、嫌疑不十分で不起訴となっていた。
事件発生から、間もなく1年。鑑定留置が計10カ月間にわたって実施された後の今回の起訴を受け、男の担当弁護士は「被疑者段階で鑑定留置を2回行うことは担当事件の中では初めて。おそらく全国的にも異例中の異例なのではないか。鑑定書を確認した上で、これからの方針を検討したい」と話している。










