1対1の構図…明らかに政権選択選挙 中道前職、自民元職の一騎討ち 眼前に広がるは大きく異なった風景 計りきれない維新票の行方に関心 かつての友党への期待も/衆院埼玉9区(飯能市、狭山市、入間市、日高市、毛呂山町、越生町)
底冷えのする夜だった。2025年2月、衆院選9区内で行われた首長選の当選者の選挙事務所。支持者らが集う狭い空間に、中道前職の杉村慎治(49)と自民元職の大塚拓(52)の姿があった。前回総選挙から3カ月余り。現場には緊張した政治の空気が漂っていた。1年後に公示された今回の衆院選で、2人は一騎打ちで議席を争っている。
■異なる風景
24年10月の前回は、自民の派閥裏金問題を巡る「政治とカネ」が争点の一つに取り上げられた。
大塚はこの問題で比例重複を認められず、6期目を逸した。25年2月に再び9区支部長に選任。地元で市民や企業の声を聞いて回り、再起の機会をうかがってきた。1月27日に開いた出陣式では「前回は悔しい思いをした。国に復帰し、日本列島を強く豊かにする」と力説した。
その「政治とカネ」を追及したのが杉村だった。選挙戦では大塚に約4千票差の約8万3千票を獲得し、国政3度目の挑戦で初の議席を得た。再選を見据える1月27日の出陣式でも、「自民は今回も裏金議員を出馬させた。これが変わらない70年の体質だ」と改めて批判を強めた。
2人の眼前には、1年3カ月前とは大きく異なる風景が広がっている。公明の連立離脱と自民・維新の連立、そして公明・立民の合流による新党「中道改革連合」の結成だ。
1月28日、大塚の姿は飯能市内の住宅地にあった。街頭演説では「高市政権で経済を成長させたい」と政策分野を強調。厳しい同市の財政状況にも言及し、「国の力を飯能に届ける」と握手を求め聴衆に駆け寄った。
「1対1の構図は明らかに政権選択選挙だ」。大塚の陣営関係者はそう位置付ける。公明とたもとを分かった選挙で後ろ盾とするのが、大塚も演説で触れる高市首相の現在地だ。陣営関係者は「首相の高い支持率と同期させていく」との絵図を描く。その傍らで「これまで公明とは地域の課題に取り組んできた」と、かつての友党への期待もにじませた。
■お見合い
「よろしくお願いします」。狭山市で1月28日に行われた杉村の街頭演説で、立民と公明の地方議員が名刺を交わした。杉村は「政治資金のことをはっきりしようと私たちは結集した」と中道を紹介し、食料品の消費税ゼロなどを訴えた。
ある公明議員は「政治とカネ」の問題を引き、「私たちのやりたいことができるようになった」と新党を迎える。「公明さんとはお見合いしたばかりだ」。杉村の陣営関係者は、公示期間の中で急造の組織を結束させていくとの考えを示した。
杉村と大塚の他に2人が出馬した前回は、3番手の維新候補が約2万1千票を得ている。
大塚の陣営関係者は維新票の行方について、選挙戦が急に訪れたことなどから「計りきれない」と見る。一方で維新周辺は「自民には前回とは違う『改革派』の空気感が出ている」と説き、その動向に関心を寄せる。
9区は伝統的に保守の地盤が強いとされてきた。25年7月の参院選埼玉選挙区で参政党から出馬、初当選した参院議員=元飯能市議=の「地元」にも当たる。選挙区の環境が杉村と大塚の戦いに作用するのかどうかも注視される。=敬称略










