埼玉新聞

 

伝統産業支える現実…外国人材 受け入れ「未来に直結」 2月1日に市長選の投開票

  • 鋳型に熱したアルミを注ぐユリ・サプトロさん=19日、川口市

    鋳型に熱したアルミを注ぐユリ・サプトロさん=19日、川口市

  • 【地図】川口市(背景薄緑)

    川口市の位置

  • 鋳型に熱したアルミを注ぐユリ・サプトロさん=19日、川口市
  • 【地図】川口市(背景薄緑)

 任期満了に伴う埼玉県の川口市長選は25日、告示される。現職で3期目の奥ノ木信夫氏(74)は2月8日の今任期をもって引退する。選挙戦には、これまでに会社役員や県議ら、いずれも新人の6人が立候補を表明している。市政には中距離電車停車へ向けたJR川口駅の再整備や、市人口の約8・8%にも上る外国籍住民との共生の在り方など、さまざまな課題が残されている。投開票は2月1日。

 砂で作った型に溶かした金属を流して部品を作る「鋳物」で有名な埼玉県川口市。溶解炉(キューポラ)は映画「キューポラのある街」や、市のキャラクターのモチーフとして親しまれてきた。市の伝統産業を支えるのは今、外国人材だ。専門家は「外国人材の施策は地域の未来に直結する課題」として、対策がないままでは産業の危機につながると指摘する。

 ■技術なくしたくない

 「多くの同業者が技術を継承できず廃業した」。ロボット部品などの鋳物を生産する「小泉アルミ」(川口市上青木)の内田英嗣社長(56)は、寂しそうな表情で語る。かつて数え切れないほどいた職人たちは高齢化に伴い大幅に減少。鋳物に代わる金物製造技術の台頭もあり、昔ながらの製法を守る市内の企業は、内田さんの知る限り、片手で数えるほどしか残っていない。

 担い手不足を受け、20年ほど前から技能実習や特定技能などの外国人材を受け入れ始めた。現在はアジア圏出身の9人の外国人が働く。

 インドネシア人で特定技能の資格を持つユリ・サプトロさん(29)は8年目のベテラン。慣れた手つきで鋳型を形成すると、700度前後の溶解炉からアルミを流し入れた。「夏の暑さでの仕事が一番大変だが、完成した時はやりがいを感じる」と目を輝かせる。

 砂で作る鋳型は「生型」(なまがた)とも呼ばれる。少しでも手元が狂えば簡単に崩れ、扱いには熟練の技術が必要。マニュアルもなく、先人の背中を見て体得するしかない。

 内田さんは「日本の若者には好かれない仕事」と話し、一生懸命に働く外国人の社員に技術継承してほしいと考えている。「生型で作る金物は再現度が非常に高く、温かみのある手触りは工芸品にも向き魅力がたくさん。川口の誇れる技術をなくしたくない」

 ■好き嫌いの次元ではなく

 建材金属加工を手がける「技研金物」(同市東領家)では、全社員の約4割に当たる18人の技能実習生などの外国人材が事業を支える。

 総務課長の納口元彰さん(39)は「なくてはならない存在。できるだけ長く働いてほしい」と話す。現場では会話での情報共有が必須。活性化を目的に導入した交換日誌は、日本語学習の機会にもなっている。

 市内に住む納口さんの周囲からは外国人について、「どのような人か分からないので関わりたくない」などの声が聞かれるという。「交流の機会を増やして分断を解消してほしい」とし、「製造現場は(外国人を)好き嫌いという次元ではない。共生の施策を打ち出して」と注文した。

 ■目をそらさず議論を

 外国人政策に詳しい関西国際大学の毛受敏浩客員教授(71)は、日本の人口減少が続いているとして、「外国人材がいなければ、社会が機能しなくなる未来が来てもおかしくない」と指摘する。

 昨年6月末時点の国内の在留外国人は約395万人で、埼玉県は全国で5番目に多い27万7209人。埼玉労働局によると、県内の外国人労働人口は年々増加し、2023年には10万人を突破した。翌24年には約1万6千人増加し、12万62人で過去最多を更新した。毛受客員教授は「在留外国人口は、日本人口の減少幅を補うように反比例で増え続けている。40年代には1千万人に達する可能性がある」とした。

 一方で、昨年の参院選では外国人政策が争点となり、在留外国人の増加に対して不安の声が高まった。政府や自治体の首長が受け入れの体制やアフターケアなどの課題に対応してこなかったことが背景にあると分析している。行政機関に対して「都合の良い労働力と捉えられがちな外国人材の意識を変え、地域社会を構成する一員であることを啓蒙(けいもう)していく必要がある。現実から目をそらさずに議論できる市政を目指してほしい」と話した。

ツイート シェア シェア