埼玉の「おいしかったものや印象に残ったことを作品に」 ご当地グルメや郷土料理を細やかな描写で紹介 作家の森崎緩さんが小説「埼玉おいしい出張レシピ」刊行
さいたま市在住の作家、森崎緩(ゆるか)さん(45)の小説「埼玉おいしい出張レシピ」(角川文庫)が昨年刊行された。「名古屋メシ」を取り上げた作品などで話題の森崎さんが、埼玉のご当地グルメや郷土料理にスポットを当てた。「武蔵野うどん」や「ゼリーフライ」といった県民になじみ深いグルメが登場し、改めてその魅力に気付かせてくれる一冊だ。
森崎さんは北海道函館市出身。育児中だった約20年前に小説を書き始め、2010年にデビュー。18年には「第6回ネット小説大賞」を受賞するなど注目される。料理を作ることや食べることが好きで、ご当地グルメや料理を題材にした作品を数多く発表している。
夫の転勤を機に、約2年前にさいたま市内に転居した。同市の飲食店で武蔵野うどんを食べた際に「麺がずっしりと重くて強いコシで、小麦のおいしさを感じた」といい、埼玉を作品の舞台に選んだ。さまざまなご当地グルメや名物について情報を集め、おからを材料にしたゼリーフライなどを自分でも調理した。
物語では、人の顔を認識することができない「相貌失認」という障害を抱える主人公の青年が、与野駅近くにある元割烹(かっぽう)料理屋の一軒家を舞台に出張料理人として奮闘する姿を描いた。4章構成の各章に「武蔵野うどん」「ゼリーフライ」「つみっこ」などが登場する。
主人公は依頼人たちの「思い出の味」を求めて料理と向き合う。随所に描かれる調理工程の細やかな描写に、今にも台所から良い香りが漂ってきそうだ。食事のシーンでも、武蔵野うどんの麺のかみ応えや小麦の風味、ソースをまとったゼリーフライの優しい味わいなど、魅力が存分に伝わってくる。
「つみっこ」は、本庄や秩父地域で親しまれるすいとんに似た郷土料理。水で練った小麦粉を摘み取るようにちぎり、手軽に作れることから忙しい養蚕農家で食べられていたことなど、作品では歴史的な背景にも触れている。
「埼玉は野菜や小麦がおいしくて、素材の良さを生かした料理が多いと感じた。引っ越して日は浅いが、おいしかったものや印象に残ったことを作品に盛り込んでいるので、ぜひ多くの方に読んでもらいたい」と話していた。










