埼玉新聞

 

泣いて母に電話も 容姿や技術を比較、落ち込んだロシアのアカデミー…必死に学び自分だけのテクニック磨く 新国立劇場バレエ団・山本涼杏さん、「ソリスト」に昇格 観客にしっかり伝えられるダンサーに

  • 新国立劇場バレエ団のソリスト、山本涼杏さん

    新国立劇場バレエ団のソリスト、山本涼杏さん=11月25日、東京都渋谷区の新国立劇場

  • 新国立劇場バレエ団のソリスト、山本涼杏さん

 公演中の新国立劇場「くるみ割り人形〈新制作〉」で、重要な役どころであるダンス教師とねずみの女王の二役を演じている。2022年に新国立劇場バレエ団に入り、25年に準主役やソロパートを主に踊る「ソリスト」に昇格。美しくかれんな役から個性ある激しい役まで幅広く演じ分ける山本涼杏さん(23)は、「自分じゃないキャラクターになるのは楽しい」と笑顔を見せる。

 3歳でバレエを習い始めた。スーパーで買い物中にくるくる回ったり、年上の子たちの踊りを覚えて自宅で練習したり、「とにかく踊ることが好きだった」と振り返る。中学生になって、母から「勉強とバレエ、どっちを取るの?」と聞かれた時には「バレエ」と即答した。

 中学卒業後、ロシアで最も権威のあるバレエ学校の一つ「ボリショイ・バレエアカデミー」で3年間学んだ。クラスメートは全員ロシア人で、幼い頃から選抜され残ってきた子たちばかり。技術や容姿を比較して落ち込み、泣きながら母に電話したこともあった。

 「自分にしかできないテクニックを磨こう」。クラスメートの動きを必死に見て学び、「他の人より少しでも長く立っていよう」「もっと足を上げよう」と心の中で競い合った。徐々に試験で高得点できるようになり、苦手だったジャンプも強みに変わった。

 現在は、さいたま市内から新国立劇場がある東京・渋谷まで通い、日々技術を高めている。いつか演じてみたいのは、「ドン・キホーテ」のキトリや「眠れる森の美女」のオーロラ姫。「いろんな役をすぐにできるようにし、観客にしっかり伝えられるダンサーになりたい」と力強く語った。

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