埼玉新聞

 

廃止提言に利用者反発 埼玉・伊奈にある「県民活動総合センター」 有識者会議「県が運営すべき施設としての役割を終えている」 「廃止されたら、どこで活動すれば」住民や利用者たちは口々に不安を募らせ

  • 廃止の提言がされた県民活動総合センター=伊奈町内宿台

    廃止の提言がされた県民活動総合センター=伊奈町内宿台

  • 廃止の提言がされた県民活動総合センター=伊奈町内宿台

 伊奈町にある県民活動総合センター(指定管理者=公益財団法人いきいき埼玉)の存続を巡って、町民や利用者らに動揺が走っている。発端は今年3月に公表された県の公の施設の在り方に関する報告書。大学教授らで構成される有識者会議が、県保有5施設の集約化や廃止を含めて検討し、必要性や活用方策をまとめた。県活センターについては「県が運営すべき施設としての役割を終えている。施設を廃止すべきだ」と提言が出され、反発する声が高まっている。県は最終的な結論を出していないとしており、方向性を検討するため関係者の聞き取りを開始した。

 県活センターは、県民のボランティア活動や社会福祉、社会教育活動といった生涯学習の拠点として1990年に設置された。400席のホールや200人以上が収容できる大会議室をはじめセミナー室、宿泊室、体育館、テニスコート、茶室などを完備。コンビニエンスストアや食堂も併設し、イベントや各種資格試験会場、企業などの研修の場として活用されている。

 2023年度の利用者数は、発足当初の2・8倍となる約74万5千人。県の市民活動サポートや埼玉未来大学、シルバー人材派遣などの事業拠点になっているため、継続的な利用者は多い。

 「ここが廃止されたら、どこで活動すればいいのか」「伊奈町唯一の宿泊施設で防災避難所なので、なくなったら困る」―。廃止の提言を受けて、住民や利用者たちは口々に不安を募らせる。有志の会を立ち上げ、署名活動を始めた徳江義之さん(68)は「町民だけでなく県内のさまざまな団体が利用している。廃止されたら影響が大きい」と約5千筆を集めた。インターネット署名は3千を超えている。

 今月11日には、存続を求める請願が町議会で採択された。これに先立ち大島清町長は10月28日に県庁を訪れ、要望書を大野元裕知事に手渡している。上尾市議会、春日部市議会では9月定例会で同様の意見書が可決された。

 今月5日に行われた県議会12月定例会一般質問では、町田皇介県議(民主フォーラム)、戸野部直乃県議(公明)が相次いでこの問題を取り上げた。「有識者会議のプロセスが適切だったか」「実態把握や意見聴取は十分だったのか」などを問いただし、知事は「廃止ありきではなく、あらゆる視点から検討を行った上で総合的に判断すべきと考えている」と答弁した。

 また、公の施設の在り方有識者会議と並行して行われていた「県指定出資法人あり方検討委員会」も同時期に報告書を提出。いきいき埼玉に対し、県活センター管理運営事業の廃止を含めた別法人との統合などを提言した。所管する県の共助社会づくり課は「提言の内容について丁寧に把握し、検討していきたい」として、利用者、関係者への聞き取りを一部開始したことも明らかにした。

 いきいき埼玉の永沢映理事長は「県保有施設であり、廃止については県が検討、決定するもの。当財団は施設の指定管理者として、価値の向上を目指して適切な運営に努めていきたい」とコメントした。

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