埼玉新聞

 

甲子園の夢 準硬式で 大学生が主体で大学準硬式野球の「東西対抗日本一決定戦」 競技継続の選択肢に 「大学で準硬式野球がメジャースポーツになるよう発信し続けたい」

  • 甲子園球場で行われた東西対抗日本一決定戦(提供)

    甲子園球場で行われた東西対抗日本一決定戦(提供)

  • 甲子園球場で行われた東西対抗日本一決定戦(提供)

 11月下旬、甲子園球場で大学準硬式野球の「東西対抗日本一決定戦」が行われた。試合には、京都産業大4年の中西健太さん(21)=滑川町出身、狭山ケ丘高出=が出場し、埼玉大4年の山中達也さん(22)=朝霞市出身、川越高出=が実況を務めた。72大学が加盟する関東地区準硬式野球連盟の学生委員長でもある山中さんは「大学で準硬式野球がメジャースポーツになるよう発信し続けたい」と埼玉県内の高校球児に呼びかけ、競技継続の選択肢の一つになることを願った。

●硬式との違い

 準硬式野球は、硬式球と同じコルクと樹脂の芯を、軟式球と同じゴムの皮で包んだボールを使用する。表面がゴムであるため安全性が高い一方、打撃の感触や打球の跳ね方は硬式に近い。

 現在は競技者の大半が大学生。今年3月時点で準硬式野球部がある大学は全国で211校に上り、約1万人がプレーしている。準硬式野球の中学大会は昨年に消滅し、社会人はごく一部の企業がリーグ戦を行うのみ。競技者が限られているのが実情だ。

 大学硬式野球ほど厳しくなく、それでいて真剣に野球と向き合える環境を理想とする。山中さんは「体育会系の部活の要素もありつつ、学業やアルバイトの時間をしっかりと取れるのが魅力」と語り、充実した学生生活が送れる点を強調する。

●学業との両立

 新型コロナウイルスの影響で、1万人を超えていた大学準硬式野球の競技人口は一時8千人台まで落ち込んだ。減少に歯止めをかけるべく、全日本大学準硬式野球連盟は交流サイト(SNS)やメディアで活動の発信を強化。世間の注目を集めるために、2022年に始まったのが東西対抗戦だった。

 大会の選考基準は、野球の技術に加え、学業の成績が不良ではないことも含まれている。大学準硬式野球が文武両道の精神の下に行われていることを示すためだ。選抜された選手たちにはキャリア支援研修会などの機会も設けられ、就職面での恩恵を受けられる。

 今回、選出された中西さんは西日本選抜で出場し、適時二塁打を放つなどの活躍で勝利に貢献した。狭山ケ丘高校時代にかなわなかった甲子園出場の夢を、大学準硬式野球で実現させた。「甲子園に立った瞬間、感動と喜びで鳥肌が立った」と憧れの舞台でのプレーを胸に刻んだ。

●学生主体の運営

 大会や定期リーグ戦の運営を学生が中心となって行うことを理想としている。「社会に役立つ人材育成」を掲げ、球場の手配や協賛企業集めなど、学生が社会経験を積む機会が設けられている。学生の運営組織である「学生委員」が設置されているのは、現在は大学準硬式野球連盟のうち関東連盟と関西連盟のみだが、今後は全国への展開を目指す。

 選手と運営側は明確に区別されず、試合に出場し運営に携わる選手もいる。現在は運営に専念している山中さんも3年次まで選手と運営を兼任していた。「業務は先輩から教えてもらって、今では後輩たちに引き継いでいる。この流れが途切れないようにしたい」と大学準硬式野球ならではの文化の継承に力を注いでいる。

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