埼玉新聞

 

AIで中小の新規参入支援 埼玉・越谷のランドブリッジ 三森一輝社長 警察官からIT業界に転身した異色の経歴

  • 「AI技術は人手不足などの課題解決にも有効。企業の成長トレンドにつなげたい」と話す三森社長=11月21日、越谷市内

    「AI技術は人手不足などの課題解決にも有効。企業の成長トレンドにつなげたい」と話す三森社長=11月21日、越谷市内

  • 「AI技術は人手不足などの課題解決にも有効。企業の成長トレンドにつなげたい」と話す三森社長=11月21日、越谷市内

 「人工知能(AI)の力で中小企業の新規事業参入など挑戦意欲を醸成したい」。越谷市のシステム開発ベンチャーLandBridge(ランドブリッジ)の三森一輝社長(29)は、警察官からIT業界に転身した異色の経歴を持つ。生成AIを使った独自のコーディング技術で、従来の3分の1程度の速さでホームページ作成や在庫管理などのバックヤードシステムを構築するAI駆動開発を習得。「AIにフルベット(全賭け)」しシェア拡大を狙うIT業界の風雲児だ。

■「稼ぐ力」が成長へ

 三森社長は2021年8月、約7年半勤めた埼玉県警察を退職。勤続年数に関係なく個人の腕(技術力)次第で評価されるITの世界に大きな魅力と可能性を感じ、転職を決意した。

 4歳下にプロ野球横浜DeNAベイスターズで活躍する三森大貴選手がおり、「弟に少し影響を受けたのかも」と安定した地位を捨ててまで勝負に出た理由を明かす。元々理系出身ではなかったが、エンジニアとしてシステム会社に転職。そこで日本人よりも安い給料で働く有能なベトナム人技術者らの存在を知り、「彼らと組めばシステム開発のスピードも上がり、コストも抑えられる」と22年10月に起業した。

 現在、自身を含め社員数は5人。うち2人は同じ警察官出身だ。建設業や金融機関など大企業の1次下請けも増えており、今期は速報値ベースで利益1億円を確保した。「私自身、警察官という全くの異業種から飛び込んだ経験があるからこそ、何から始めたらいいか分からない人の悩みが痛いほど分かる。事業拡大を目指す中小企業の“稼ぐ力”に役立ちたい」と語る。

■世界との懸け橋に

 同社のAI駆動開発ツールを駆使すれば、従来の10倍以上の速さでデータ管理システムなどの開発が可能。現在、「AI面接プラットフォーム」や「AI新規事業開発ツール」など6製品をリリースしている。

 三森社長は協力関係を結ぶベトナムなど新興国の成長意欲と日本の技術力を融合し、「グローバル市場で戦える中小企業を増やしたい」と意欲。社名のランドブリッジには「日本と世界の懸け橋になる」との思いを込めたという。

 ただ、AI技術の急速な進歩で「誰でも簡単にシステム開発ができる時代が必ず来る」とIT業界の受託型ビジネスモデルに不安も抱く。今後は市場調査やコンサルティング機能の強化で他社との差別化を図るとともに、冷凍食品販売や出版事業などへの参入も視野に入れている。

ツイート シェア シェア