ヘルスケアを成長戦略に 富士フイルム 「ジェリー アクアリスタ」発売15周年 8、9日に埼玉・越谷のレイクタウンでイベントも
富士フイルムが開発したスキンケアブランド「アスタリフト」の「ジェリー アクアリスタ」が発売15周年を迎えた。2000年代に主力のフィルム需要が落ち込む中で、技術資源を生かせる可能性を探り、新たな成長分野の一つとして化粧品事業に参入。「サイエンスに裏付けられた実感できるスキンケア」商品を、開発と商品企画が一体となり展開している。
■危機感からの挑戦
富士フイルムは映画、写真用フィルムの国産化を目指して創業し、独自技術を基盤とした製品やサービスを開発。ヘルスケア事業領域では、独自のナノテクノロジーを生かしたスキンケア化粧品やサプリメントの予防領域から、内視鏡やコンピューター断層撮影(CT)、磁気共鳴画像(MRI)などの医療機器による診断領域、医薬品やバイオCDMO(医薬品開発製造受託機関)、創薬支援などの治療領域まで、幅広く人々の健康を支えている。
化粧品事業は06年から本格参入。開発に約20年携わる本間俊之さん(45)=和光市出身=は当時、新入社員として配属され、朝霞市にあった研究拠点(現在は神奈川県開成町)で挑戦が始まった。「その時は大半の社員が写真関連部署からの異動で、化粧品業界の知識や慣習には不慣れだった。それでも全員で勉強しながら、一歩ずつ前に進めていた。フィルム市場の変化を受け、富士フイルムが新たな成長分野に挑むという意義を感じており、現場には前向きな空気があった」と振り返る。
■フィルム技術を転用
「ジェリー アクアリスタ」は洗顔後の化粧水前に使う先行美容液で、赤いプルプルとしたジェリー状が特長。世界最小クラスまでナノ化された「Wヒト型ナノセラミド」が潤いを保ち続け、「ナノアスタキサンチン」が、肌にハリと弾力感を与える。
商品企画に従事する青木美菜子さん(42)=川口市出身=は、「発売当時は先行美容液という概念が珍しかった。地道な研究を続け、肌の土台となる角層をケアすることが重要だと考えた。ジェリーの形状が戻ることで毎回開ける時に気持ちよく使っていただけると好評」と魅力を伝える。
化粧品開発に生きたのが、フィルム事業で培った高度な技術。皮膚の角層とフィルムの乳剤層は厚さが20マイクロメートルと、ほぼ同一である事実に基づき、さまざまな研究開発を推進。写真フィルムのベースはゼラチンで、コラーゲン研究にも役立つ。写真の退色を防ぐ抗酸化技術は、皮膚のダメージ研究に応用された。今年6月には「セラミド配合単層リポソーム」を開発し、肌のバリア機能に欠かせないラメラ構造の強化を確認するなど、技術革新を続ける。
■新たな体験を提供
「サイエンスに裏付けられた実感できるスキンケア」は、商品開発の方針段階から担当者間で共有。「ジェリー アクアリスタ」シリーズ発売15周年の節目に、「お客さまとの関わりをさらに大切にしたい」と決意を新たにする。
青木さんは「ワクワク感と気持ちが上がる体験を提供していきたい。研究の成果を実感できる商品をこれからも目指していく」と笑顔を見せる。
本間さんは「競争の激しい化粧品業界の中で、私たちの研究を評価していただけるのはモチベーションにつながる。研究、商品開発、ブランディングなどの事業の各チームが連携することで、自信を持って商品を送り出していきたい」と力を込めた。
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8、9日に越谷市のイオンレイクタウンで発売15周年イベントを開催する。詳しくは特設ページ(https://ls-jp.fujifilm.com/astaliftbrand/14thanniversary/)へ。










