埼玉新聞

 

大学進学率25・3% 首都圏の児童養護施設の子ども 一般家庭の半分以下に

  • 【ちなみイラスト】教室

    大学進学率25・3% 首都圏の児童養護施設の子ども

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 埼玉県社会的養護を考える会は10日、首都圏の児童養護施設を対象とした「児童養護施設の子どもの進学に関するアンケート調査」の結果を公表し、施設から高校を卒業した子どもの大学進学率が25・3%と、一般家庭の半分以下であったことを明らかにした。

 調査は今年6月に、東京・埼玉・神奈川・千葉の首都圏の児童養護施設56施設で勤務する職員を対象に実施。進学への課題や高校卒業後に必要となる支援・制度などを聞く全9問の質問を設け、自由記述欄に卒園後の支援への悩みなどの回答を求めた。

 調査結果によると、施設の子どもたちの大学・短期大学への進学率は25・3%と一般家庭の62・3%の半分以下だった。専門学校を加えた高等教育機関への進学率も45・5%と一般家庭の87・3%の約半分となり、施設の子どもたちには、高等教育機関への進学に高いハードルがあることが分かったという。

 その背景にあるのは、経済的な問題だ。調査では進学後の課題について、68・4%が「生活費」、40・7%が「学費」に不安を覚えていると回答。施設職員からは「進学は経済的な問題が常に付きまとう。学費、生活費の工面は、奨学金制度があっても、子どもたちに重くのしかかっている」との意見も挙がったという。

 進学後の精神的不安に悩む子どもも多い。大学中退、早期退職の要因として81・5%が「学校・職場での人間関係」と回答し、高校卒業後に必要とされている支援として87・0%が「メンタルケア」と回答した。「卒園生は増え続ける中、職員は増えないので支援の手が回らない」との声もあり、精神的なアフターケアを行う人員不足も課題だ。

 同調査を実施した、県社会的養護を考える会の八木俊介氏は「各施設などでアフターケアの実施状況にばらつきがある」とし、「多くの市民の方に子どもたちのことを知ってもらい、行政や施設のアフターケアが充実していくのを望んでいる」と話した。

 同会は、11月1、2、15、16日にJR浦和駅東口で、児童養護施設の子ども進学支援「つながる奨学金・街頭募金」を実施する。

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