埼玉新聞

 

身近な動植物の姿…観察記録を本に 県の生態系保護協会・春日部支部長の三好さん、埼玉新聞で連載したうちの107編を収録 さらに加えた未掲載の1編、ツミの子育て記録も

  • 「道ばただより 足元の自然を見つめて」を出版した三好あき子さん

    「道ばただより 足元の自然を見つめて」を出版した三好あき子さん

  • 「道ばただより 足元の自然を見つめて」を出版した三好あき子さん

 県生態系保護協会春日部支部長の三好あき子さん(74)が20日、書籍「道ばただより 足元の自然を見つめて」(埼玉新聞社刊、税抜き1500円)を出版した。身近な動植物の姿を独自の感性でつづった観察記録。本紙地域面で2006年6月から800回にわたって連載した記事のうち107編を収録し、未掲載の1編を加えた。三好さんは「人間だけでなく、いろんな生き物によって自然が成り立っていることを知ってもらえたら」と話している。

 三好さんは幼い頃、植物好きだった姉の影響を受けて自然に興味を持ち、昆虫採集が趣味になった。高校生の頃は自然愛好会に入ってバードウオッチングに親しみ、成人祝いでは当時高価だった双眼鏡を両親からプレゼントされた。30代半ばで自然観察会に参加したのをきっかけに同協会に加入。春日部支部長に就任後、当時の春日部市担当記者に依頼され、連載を始めた。

 観察するのは三好さんが住む春日部市と隣接市町が中心。連載中は常にカメラを携帯し、公園や田んぼ、川などあらゆる場所に目を光らせた。中でも最も多く生き物に遭遇したのは、自宅マンション付近だったという。

 玄関のドアを開けた時に、足元で動いていた黒い生き物はコクワガタ。普段、雑木林で樹液を吸う昆虫が「まさか、こんな所に?」と疑問が浮かぶ。そこで光に集まる習性から想像力を働かせ、「マンションの明かりに引かれてきたのか」と推測した。

 スズメ、カタツムリ、ドングリ、カエデ…。紹介しているのは決して珍しい動植物ではない。それでも、引き込まれるのは生態の説明に終始せず、生き物が見せるしぐさや表情をユーモラスに表現しているから。雨の中、繰り広げられるモンシロチョウの乱舞は「お見合いパーティー」。冬眠明けに枝で羽を休めるスズメバチの女王、はじけたさやからボタン大の豆を飛ばす秋のフジなど、見過ごされがちな「旬」を外れた生き物に光を当てているのも特徴だ。

 初めて存在を知った生き物も。黄色と黒色のしま模様が特徴的なヨツスジトラカミキリは「飛んできた時、ハチだと思った」。調べたところ、ハチに擬態したカミキリムシの一種と判明。連載終了の2023年12月までの17年半、「たくさんの生き物と出合い、勉強できたことが一番良かった」と振り返る。

 書籍には連載時、営巣地への影響を考慮して紙面掲載を見送ったツミの子育て記録も加えた。三好さんは「遠出をしなくても、意識して目を向ければいろんな生き物と出合える。本を通じて、身近な自然の大切さを感じてもらえたら」と語った。

 「道ばただより 足元の自然を見つめて」はA5判、120ページ、フルカラー。問い合わせは、埼玉新聞社出版担当(電話048・795・9936)へ。

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