埼玉新聞

 

翔んでる埼玉県民、再び全国へとどろく「埼玉」に誇り 豊かな暮らし、官民で構築 岡本圀衛氏寄稿

  • 岡本圀衛氏

    岡本圀衛氏

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 今回が本連載の最終回となる。私の生業は生命保険のため、若干の紹介をお許し願いたい。

 再び夏目漱石先生の登場。姪の雪江さんが、「叔父さんは保険がきらいでしょう?」というと、苦沙弥先生「保険はきらいではない。あれは必要なものだ。未来の考えのある者は、誰でも入る。」と答える(『吾輩は猫である』)。何事にも天邪鬼な苦沙弥先生の言葉だから、保険が好きかどうかは分からないが、少なくとも、その頃既に生命保険が世間に知れ渡っていることが分かる。この作品の登場は1905年なので、例えば日本生命の創業が1889年であることを考えると、たった15年しか経っていない。それも明治の話である。

 生命保険は、もともとは福沢諭吉が「西洋旅案内」で紹介したものだが、それがすんなり日本に受け入れられたのは、仕組みが「無尽」や「頼母子講」と大変似ていたからである。ただ、それまでが限られた地域内での知り合い同士の助け合いであったのに対し、生命保険は大きく広げて、知らない者同士・遠隔の者同士の助け合い=相互扶助を基本とする。いずれにしても、この「相互扶助」の精神は我々の心に連綿と流れている感じがするし、そのことが集団のまとまり、結束をも培ってきたのであろう。世の中の変化や社会ニーズの多様化に合わせて生命保険の商品も変化していくが、相互扶助が基本であることに変わりはなく、その中味をサービスの向上も含め、さらに充実させ、ご契約者の強い期待に応えていかねばならない。

 さて、こうした取り組みは「民」と「民」の間のものであるが、そうした制度をさらに大きくできないものかという考えから生まれたのが、「官民協調」である。その基本はやはり「官」と「民」が埼玉県民の生活を豊かにし、幸福を願っているからに他ならない。

 現在、銀行、生損保、証券、小売、通信……等々が、それぞれの事業分野の強みを生かして、埼玉県、あるいは県の市町村と連携協定を結んでいる。協定の幅は多岐にわたり、例えば、健康長寿やがん対策、障がい者サービスの向上とかスポーツへの支援、ビジネスマッチングイベントの開催等に取り組んでおり、埼玉県に少しでも潤いをもたらすことができればというのが、それぞれ協定を結んだ各業界・企業の熱い想いであろう。

 私共、埼玉県人会も、及ばずながら同様の想いをもって、初代会長の渋沢栄一翁が目指した「埼玉県人が一緒になって発信力を高め、大きな力を発揮すること」「埼玉県人は、知徳・人格を高め、社会の役に立つこと」に全力で取り組み、それによって豊かな社会を築くことに少しでもお役に立てればと思う。これからも精進を重ねていきたい。

 本コラム連載の冒頭に「翔んで埼玉」の話をしたが、その続編が映画化されると聞いた。今度はどんなストーリーになるのか、今から楽しみだが、確実なことは埼玉の名を再び世に知らしめることであろう。我々も“翔んでる埼玉県民”として、大いなる誇りを持ち前進を続けたいものである。

 次回は彩の国さいたま芸術劇場芸術監督の近藤良平氏です。

■岡本圀衛(おかもと・くにえ) 埼玉県人会会長・日本生命保険相談役

 鴻巣市出身、県立浦和高校―東大法学部卒。1969年日本生命保険に入社。2005年社長、11年会長。現在は同社相談役。18年に埼玉県人会の第12代会長に就任。経済同友会の副代表幹事、経団連の副会長も務めた。78歳。

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