埼玉新聞

 

見上げれば広がる宇宙 埼玉・上尾出身の星空写真家KAGAYAさん 天文の魅力、作品で伝える

  • 行田市のさきたま古墳群に咲く桜と三日月を撮影した「春宵のシルエット」(撮影:KAGAYA)

    行田市のさきたま古墳群に咲く桜と三日月を撮影した「春宵のシルエット」(撮影:KAGAYA)

  • 「今はアプリなどで簡単に星座を調べることもできる。ぜひ夜空を見上げてみてほしい」と話すKAGAYAさん

    「今はアプリなどで簡単に星座を調べることもできる。ぜひ夜空を見上げてみてほしい」と話すKAGAYAさん

  • 行田市のさきたま古墳群に咲く桜と三日月を撮影した「春宵のシルエット」(撮影:KAGAYA)
  • 「今はアプリなどで簡単に星座を調べることもできる。ぜひ夜空を見上げてみてほしい」と話すKAGAYAさん

 星空写真家、プラネタリウム映像クリエーターとして活動する上尾市出身のKAGAYAさん(57)は、写真やイラスト、映像などさまざまな作品を通じて、天文の楽しみ方や魅力を伝えている。天の川や煌々(こうこう)と浮かぶ月、幻想的なオーロラなど、美しい写真や映像の数々が多くの人々を魅了し、写真を投稿する「X(旧ツイッター)」のフォロワー数は90万人を超える。

 KAGAYAさんは小学生のころに星に興味を持ち、毎晩のように星座図と照らし合わせながら夜空を見上げて星の名前を覚えていたという。独学で天文に関する知識を深め、中学生の時にためていたお年玉で一眼レフカメラと望遠鏡を購入し、星の写真を撮影し始めた。

 県立浦和高校では地学部に入部し、仲間と望遠鏡を背負って天の川がきれいに見える福島県や長野県に出かけた。撮影した写真を年に一度文化祭で展示し、来場者に説明しながら見てもらうのが楽しみだったという。

 写真以外にも星座や宇宙のイラストを描くのが好きで、「将来は創作を通じて天文の魅力を伝える仕事がしたい」と専門学校に入学。デザインに関する知識を学びながら、天文雑誌の編集部でアルバイトをするなど経験を積んだ。

 KAGAYAさんの代表作の一つが、宮沢賢治の名作童話の世界を映像化したプラネタリウム作品「銀河鉄道の夜」(2006年公開)。賢治の故郷、岩手県花巻市に何度も出かけて銀河鉄道の車窓風景を想像し、コンピューターで絵を描き映像作品に仕上げた。海外でも上映されるヒット作となり、現在もさいたま市宇宙劇場(大宮区)、県立小川げんきプラザ(小川町)など、全国のプラネタリウムで広く親しまれている。

 10年には国立天文台の観測隊メンバーとしてオーストラリアに行き、小惑星探査機「はやぶさ」の大気圏突入の撮影に成功した。「自分の目では捉えきれないような一瞬の光景を克明に残すことができた。人間の目を超えたカメラの性能の向上を感じた」と言い、以来、星空や月、オーロラなどさまざまな天文現象や風景を写真で記録している。

 1年間のうち約3分の1は国内外問わず撮影に出かけている。あらゆる空の現象を事前に把握し、撮影場所や時間など綿密にスケジュールを組む。近年は、北海道と青森県で国内では珍しいオーロラの撮影にも成功した。「写真を撮ることが目的ではなく、自分自身が『見たい』という思いが一番にある」と空への好奇心は尽きない。

 多くの人に星空や天体に親しんでほしいと願う。お薦めは月の出入りの瞬間や、毎年夏と冬に見られる流星群の観察。KAGAYAさんは、「夜空を見上げれば宇宙が広がっている。星の名前を一つ覚えるだけでも楽しみが広がり、人生を豊かにしてくれる」と話していた。

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