埼玉新聞

 

娘死亡、生後5カ月…妻が「川で溺死させた」と認める 夫と3人暮らしだった家族、法廷で語った妻「絶対に許されない」 妻の実家に帰省中の悲劇「謝っても謝り切れない」

  • 旧妻沼ゴルフ場のクラブハウス跡地の北側、利根川右岸の河川敷で捜索する警察、消防関係者ら=20日午前10時半ごろ、熊谷市妻沼

    旧妻沼ゴルフ場のクラブハウス跡地の北側、利根川右岸の河川敷で捜索する警察、消防関係者ら=1月20日午前10時半ごろ、熊谷市妻沼

  • 旧妻沼ゴルフ場のクラブハウス跡地の北側、利根川右岸の河川敷で捜索する警察、消防関係者ら=20日午前10時半ごろ、熊谷市妻沼

 生後5カ月の長女を溺死させたとして、殺人の罪に問われた、熊谷市の無職の女(30)の裁判員裁判の初公判が20日、さいたま地裁(江見健一裁判長)で開かれた。女は「間違いありません」と起訴内容を認めた。

 検察側は冒頭陳述などで、女が長女を出産した直後に不眠症と診断され、昨年10月にはうつ病と診断されたと説明した。同月から市内の実家で両親と生活をしていたが、夫は自身の実家のある福島県での生活を提案。女は「夫が私を入院させ、長女を引き離そうとしているのではないか」と思うようになり、「長女と引き離されるなら一緒に死のうと考えた」ことなどから犯行に及んだとした。

 弁護側は、女が出産前は子どもができて母になる喜びを感じていたものの、育児への不安から不眠症やうつ病を発症したと説明。夫との関係がうまくいかなくなったことなどから、死ぬしかないと思ったことが原因とした。

 女は被告人質問で、「どんな精神状態だとしても絶対に許されない。一番苦しい思いを与えてしまったのは長女で、謝っても謝り切れない」と述べた。

 起訴状などによると、女は今年1月19日、熊谷市内の利根川で、殺意を持って、長女を両手で抱きかかえて入水させ、溺死させて殺害したとされる。

 熊谷署が保護責任者遺棄の疑いで逮捕し、さいたま地検が殺人罪で起訴した。逮捕後の精神鑑定で、女は犯行当時、心神耗弱状態だったと診断された。

■ずぶぬれだった女、土や草が付いた状態 河岸に長女(以下、初報記事)

 生後5カ月の長女を置き去りにしたとして、埼玉県警熊谷署は1月20日、保護責任者遺棄の疑いで、熊谷市石原3丁目、無職の女(29)を逮捕した。20日午前10時55分ごろ、同市の利根川で、長女は意識のない状態で捜索中の消防隊員に発見され、死亡が確認された。

 逮捕容疑は18日午後10時から19日午後0時55分ごろの間、長女を熊谷市妻沼地内のいずれかの場所に置き去りにし、遺棄した疑い。

 女は「(子どもを)抱いたまま川に入った。一緒に死のうと思った」「私がしたことに間違いありません。育児に自信が持てなくなった」と供述しているという。

 同署によると、19日午前8時20分ごろ、夫の20代男性が「妻と娘がいなくなった」と110番。午後0時55分ごろ、熊谷市妻沼東で農作業中の40代男性から「ずぶぬれの女性が歩いている」と通報を受け、全身がぬれ、土や草が付いている女を利根川から約1・2キロ離れた路上で確保した。「(長女を)利根川に置いてきた」と話したという。

 長女は利根川の群馬県太田市と熊谷市を結ぶ刀水橋から約2・5キロ下流の埼玉側の河岸で発見された。

 女は夫と長女の3人暮らしで、当時は長女を連れて熊谷市内の実家に帰省中だった。

 熊谷市こども課は取材に「まだ事実関係を確認できていない」として、女からの相談の有無を回答しなかった。女は長女を出産後、警察に2度相談しているという。
 

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