埼玉新聞

 

恵みの水で至高の酒を 海外でも注目の日本酒 酒造りに適した埼玉の地下水を仕込み水に 小川町の老舗酒造会社「松岡醸造」

  • 低温で発酵させるタンクと社長の松岡奨さん=小川町下古寺

    低温で発酵させるタンクと社長の松岡奨さん=小川町下古寺

  • 【地図】小川町(背景薄緑)

    小川町の位置

  • 低温で発酵させるタンクと社長の松岡奨さん=小川町下古寺
  • 【地図】小川町(背景薄緑)

 「帝松」の銘柄で知られる小川町の老舗酒造会社の「松岡醸造」。酒造りに適した地下水を仕込み水とし、高い技術で醸造した日本酒は、全国新酒鑑評会などで数多くの賞を受賞し、高い評価を受けている。

 創業は江戸時代の1851(嘉永4)年。現在の新潟県で生まれた初代が小川町に移り住んだ。当時、秩父往還などの街道が通るこの地は物資の集積地としてにぎわい、酒の消費が見込めたこと、そして何よりも良質な水に恵まれていたことが大きかった。

 現在、松岡醸造では地下130メートルから水をくみ上げて仕込み水に使っている。荒川系の伏流水で、カルシウムなどのミネラル分が豊富に含まれている硬水だ。水の硬度が高いと発酵が順調に進み、辛口で骨太の酒になる。その一方で、香りを引き出すには、酵母菌にとって過酷な条件の方が良い。そこで同社では、低温発酵タンクで冷やして発酵を制御。コクとキレ、滑らかさを合わせ持った酒を生み出しているという。

 「水に着目し、どう利用していこうかと突き詰めるようになったのは、十数年前ごろから」と、社長の松岡奨さん(38)は話す。三つの異なる発酵室を完備し、目指す酒質に合わせて使い分ける。1996年に建造した新蔵は、冷却水を回し、コンピューターで温度管理している低温発酵タンクで、主にレギュラーの酒を造っている。

 大吟の間は、より手間のかかる高精白の酒専用の部屋。仕込み部屋全体が冷蔵庫になっているのが特徴だ。全工程手作りで、伝統の技を守っている。明治時代に建てられた明治蔵は“挑戦の蔵”。零下まで温度を下げることができる小型サーマルタンクを導入し、新しいタイプの酒造りも。業界初のワイン用プリムール酵母を使った純米吟醸酒もこの蔵で生まれた。

 海外にも、スウェーデンをはじめ米国や台湾などに輸出。インドネシアでは現地資本がバリ島で進めている酒蔵建設に参加。現地の長粒米を使った酒の開発も進めている。

 海外でも注目されている日本酒。日本の「伝統的酒造り」はユネスコ無形文化遺産にも登録された。社長の松岡さんは「日本酒の軸は“うまみ”だと思っている。この伝統をリスペクトしながら、新しいことにチャレンジしていきたい」と話している。

 松岡醸造 小川町古寺7の2。電話0493・72・1234。

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