行田マンホール事故、死亡男性4人の身元判明 下水道調査会社の同僚 転落防止の保護具装着せず、酸素送るマスクも用意なし 現場周辺では硫化水素を検出…マンホール内では基準値の15倍超
行田市長野で2日、下水管点検作業員がマンホールに転落し死亡した事故で、行田署は3日、男性4人の身元が判明したと発表した。マンホール内には硫化水素の濃度を測定する検知器が国の基準値(10ppm以下)の15倍超を表示しており、4人は作業中、体調に異変を感じるなどして転落したとみられる。また4人は転落防止の保護具を装着せず、現場では地上から酸素を送るマスクも用意されていなかったことが明らかになった。
同署によると、亡くなったのはいずれも会社員で、行田市谷郷2丁目の本間洋行さん(53)、上尾市平塚の樋口英和さん(56)、鴻巣市上谷の松村誠さん(54)、北本市在住の男性(54)。4人はさいたま市浦和区に本社がある下水道調査会社「三栄管理興業」の加須支店の同僚だった。同署は司法解剖して死因の特定を進め、安全管理が十分だったかどうか、業務上過失致死の疑いも含めて捜査する。
市消防本部によると、事故後に消防隊員がマンホール内の硫化水素の濃度を測定したところ、安全に作業するために法律で決められている国の基準値を上回る30~80ppmが検出された。同社によれば、4人全員が転落時、硫化水素の濃度は国の基準値を大幅に上回る15倍超を表示していた。
マンホールは直径約60センチ、深さ約12メートルで、この先が直径2・6メートルの下水管につながっている。この下水管は1981年度に設置されたという。
同署などによれば、本間さんがマンホール内のはしごを地下に下りている途中で有毒な硫化水素を吸って意識を失った可能性があり、落下した後、救助しようとした3人も次々と転落したとみられる。4人とも目立った外傷はなかった。
事故現場となったマンホールの周辺では3日、規制線が張られ、花束が添えられていた。
事故は2日午前9時25分ごろ、下水管の点検中に作業員がマンホール内に転落したと119番があった。転落した4人は午後4時過ぎまでに救助されたが搬送先の病院で全員死亡が確認された。現場周辺では硫化水素も検出され、救助活動が6時間超かかるなど難航した。
4人が勤務していた同社は3日夜、コメントを発表し「弊社が受注している下水道管点検業務で重大かつ誠に痛ましい事故を発生させ、ご遺族の皆さまには深くおわび申し上げる」として「事故原因の究明に全面的に協力し、再発防止に向けた対策を速やかに講じる」としている。
市によると、4人は1月に八潮市で発生した道路陥没事故を受け、国が自治体に要請した下水道の緊急点検を行っていた。










