母の反対、押し切った娘の決意「お父さんと甲子園に行きたい」 市川越3年のマネジャー、父の監督と野球部支える 同じ部活をする重圧…一度退部するも甲子園への夢へ再び 親子で挑む最後の夏、夢果たせず涙
19日、県営大宮球場で行われた全国高校野球選手権埼玉大会4回戦、市川越―春日部共栄。1―8で敗れた市川越3年の室井夢叶(ゆめか)マネジャー(17)は、涙をこらえることができなかった。父の室井宏治監督(46)と共に甲子園を目指して、3年間野球部を支えてきた。「悔いなく終われた。お父さんとずっと一緒にいられてうれしかった」。同じ舞台で戦った2人の夏が終わった。
室井監督は羽生実、鷲宮の指導者を経て、2021年秋から市川越の監督に就任した。夢叶さんにとって野球は生まれたときから身近な存在だった。小学生のときは3歳下の妹と一緒に、羽生実、鷲宮の練習に月2回参加。マネジャーと交流を重ねるうちに、父と共にグラウンドに立つことを夢見ていた。
中学生になると、母の類子さん(46)から「マネジャーになりたいなら、スポーツを一生懸命やっている人の気持ちが分かるようになりなさい」と言われ、バレーボール部に入部。県大会ではベスト8に入るなど、選手としてもつらい練習を耐え抜いた。
部活動を引退すると、すぐに市川越への入学を決めた。野球部のマネジャーになることは、「大変になる」と母から反対された。しかし、「お父さんと一緒に甲子園に行きたい」と夢叶さん。類子さんは2人のお互い一緒にやりたいという強い決意に押され、見守るようになった。
高校に入学すると、親子で同じ部活をする難しさを実感した。夢叶さんは周りに親子と見られる重圧から、あいさつや振る舞いに人一倍気を使った。1年の夏には一度退部したものの、「憧れのマネジャー。お父さんと野球をすることがずっと夢だった」と再び決意を固めた。
春日部共栄との4回戦。夢叶さんはこの日、初めてベンチ入りした。試合中はスコアをつけ、球数の確認、相手の対応など、マネジャーとしての役割を全うした。2人で挑む最後の夏。試合後は父から「お疲れさま」と声をかけられ、固い握手を交わして会場を後にした。
集大成の夏、親子で甲子園に行く夢は果たせなかった。それでも、夢叶さんは「最後に一緒のグラウンドに立てて、うれしかった」と涙を拭った。父と共に駆け抜けた3年間。幾多の苦難を乗り越え、全てを出し切った顔は晴れ晴れとしていた。










