埼玉新聞

 

浦和と大宮の争いではない…さいたま市役所の移転決まる 20年にわたる最後の課題「合併が完成した」

  • 氏名が書かれた票を投じる出席議員ら=29日午前1時25分ごろ、さいたま市議会

 さいたま市役所(浦和区常盤6丁目)の移転が決定した。28日午前10時過ぎに開会した市議会4月臨時会は15時間を超える長丁場に。記名投票は29日未明に始まり、採決結果を受けて議場に拍手が起きた。市合併以来の20年にわたる「最後の課題」とされ、市議らは「感無量」「ゴールではなく、スタート」と評価した。一方で、「住民軽視」と批判の声も出た。

 議案を審議した総合政策委員会では、さいたま自民から「将来的に、さいたま市役所の所在地については、さいたま新都心にふさわしい住居表示の実施を検討すること」とする付帯決議案が提出された。採決で5人が退席し、賛成と反対が3人の可否同数となり、井原隆委員長(さいたま自民)の決裁で採択した。

 さいたま市は2001年5月、浦和、大宮、与野の旧3市が合併して誕生した。当時、浦和と大宮による主導権争いがあり、00年9月に調印された合併協定書では、新しい市役所の位置について「さいたま新都心周辺地域が望ましい」とし、「与野(中央区)」を想定していたされる。移転決定した住所地は「大宮区北袋町1丁目」のため、浦和と大宮の争いに終止符を打つとして、付帯決議が提案された。付帯決議が採択されたことで、移転に慎重や反対だった浦和地域選出の市議ら8人が賛成に回ったという。

 共産や無所属の市議は本会議で反対討論を行った。近隣住民への説明会が4月に実施された3回だけで、地元の合意形成がないままに採決されたとして、「住民不在」と指摘。重要な議案の審議に、臨時会の日程を1日だけとしたことについても批判した。

 臨時会の審議が長引いたため、29日までの延長を決定。記名投票は午前1時25分ごろから始まり、午前1時40分ごろ、採決結果が発表され、議場には拍手が起きた。

 阪本克己議長(民主改革)は閉会あいさつで、「長時間にわたり、市役所の位置を変更する議案が審議、可決された。本庁舎の位置は本市誕生より、重要な課題として、検討を重ねられてきた。市の象徴となる新庁舎がさいたま市全域の発展に大きく寄与し、本市が目指す将来像の実現に資するものとなるよう、関係各位に引き続きご尽力をお願い申し上げます」と述べた。

 市庁舎等整備検討特別委員長で、さいたま自民団長の鶴崎敏康市議は、合併協定書の策定に関与していただけに、「感無量。20年の疲れがどっと出た。最後の宿題で、一番難しい問題だった。合併が本当の意味で完成した」と取材に応えた。今後については「浦和と大宮の争いではない。10区が全て輝くさいたま市をつくれるスタートになった。まちづくりを本格的に議論していく」と語った。

 3分の2を大きく上回る48人が賛成票を投じた。民主改革団長の三神尊志市議は「多数の賛成を持って可決できたことは非常に大きかった。議会として前向きに取り組める。この議決がゴールではなく、スタート。一つのさいたま市の将来に向けて、議論を深めていきたい」と話していた。

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