埼玉新聞

 

コメ高騰…経営を圧迫 弁当店の倒産、過去最多ペース 1~5月は全国で22件 備蓄米や外国産米も出まわるが「品質維持のため、できるだけ変えたくない」

  • ふたが閉まらないほどの大盛り唐揚げ弁当が人気の「キッチンBUS STOP」=12日、三郷市幸房

    ふたが閉まらないほどの大盛り唐揚げ弁当が人気の「キッチンBUS STOP」=12日、三郷市幸房

  • ふたが閉まらないほどの大盛り唐揚げ弁当が人気の「キッチンBUS STOP」=12日、三郷市幸房

 コメの価格高騰が駅弁や仕出し弁当店などの経営を圧迫している。帝国データバンクによると、今年1~5月の弁当店の倒産(負債1千万円以上、法的整理)は全国で22件発生。スーパーマーケットやコンビニエンスストアなど大手小売店との競争激化で、前年同期(21件)を上回る過去最多ペースとなっている。政府備蓄米に加え、外国産米も市場に出回り始めたが「品質維持のため、できるだけコメを変えたくない」と、不安を口にする経営者もいる。

 ■増える業績悪化

 コロナ禍の2021年以降、原油高や円安、ウクライナ情勢の影響を受けて鶏肉や食用油、小麦粉などの価格が軒並み高騰。加えて冠婚葬祭の大口注文やテレワークの浸透でランチ需要が大幅に減り、いわゆる「まちのお弁当屋さん」にとっては厳しい状況が続いている。また、大手コンビニやスーパーが500円以下の「ワンコイン弁当」を売り出すなど競争が激化し、価格転嫁が思うようにできず収益力が下がった店が多い。

 弁当関連産業の24年度損益状況(帝国データ調べ)は「増益」が全体の45・0%を占めたものの、「赤字」は30・2%、「減益」は21・7%と業績悪化も2年ぶりに増加。特にコメの価格高騰が経営に直結している。

 ■仕入れ値1年で倍に

 デカ盛り唐揚げ弁当で知られる三郷市の人気店「キッチンBUS STOP(バスストップ)」では毎月約1100キロのコメを使用する。1年前に10キロ3300円だった仕入れ価格は今年5月時点で6850円に上昇。「1年でこれほど値上がりした記憶はない」と中村巧社長(41)は嘆く。それでも唐揚げとご飯の量は一切減らさず、価格も据え置き。交流サイト(SNS)を使った集客や、食材の廃棄をゼロにする工夫で経費上昇分をカバーしている。

 週2回のペースで通う千葉県松戸市の50代男性は「このボリュームでこの価格は、ほかにはない。コスパ(費用対効果)抜群で助かるけど、必要以上に無理しないでほしい」と店を気遣った。

 ■配達料金の設定も検討

 創業100年を超える仕出し弁当の「正直屋」(さいたま市浦和区)は、グループ企業が都内の大学などで学生食堂を運営。外国産米や仕入れ先の追加なども検討したが、価格面で折り合いがつかず断念した。そのため、定食のご飯に押し麦を2割程度交ぜて分量を確保。また、ご飯と麺のセットメニューを新たに追加することで現状をしのいでいる。

 帝国データバンクによると、コメを巡る弁当店の思惑は複雑化しており、物価高で価格にシビアな消費者が増える中、「採算性をどう確保するのか、各社の経営戦略が試されている」と話す。正直屋グループの山崎誠司社長(55)は「長引く物価高で、対応力(資金力)のある企業とそうでない企業の二極化が進んだ」と分析。仕出し弁当やケータリング事業では「採算性を高める上で、ウーバーイーツのように距離に応じた配達料金の設定なども検討せざるを得ない」と答えた。

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