埼玉新聞

 

<ジモトピア>あの大きな森の奥には…街中の知られざる景勝地 季節感じる散策路 隠れ家風「茶寮」で一服

  • デザインの選考には住民も関わったという、日進駅構内にある“地元の宝”を描いたステンドグラス=さいたま市北区

  • 木々の彩りと100年近くを経た建物がノスタルジックなムードを醸す農研機構の敷地内

  • 日進駅周辺

  • 日進駅周辺

 JR川越線日進駅の改札を出ると、2枚の大きなステンドグラスが目に飛び込んでくる。描かれているのは、さいたま市指定の無形民俗文化財「日進餅つき踊り」と今年50周年を迎えた「大宮日進七夕まつり」。躍動感あふれる情景が、後方から差し込む陽光を受け色鮮やかに輝く。同駅周辺は、街なかに景勝地のような空間が潜んでいる。

 駅南口から真っすぐに延びる七夕通りは、昔ながらの商店街。おいしそうなコロッケが並ぶ精肉店手前の路地を右折すると、立派な鳥居が見えてくる。毎年、餅つき踊りが行われる日進神社だ。江戸時代、中山道を大名や武士らが通る際、慰安と接待を兼ねたもてなしが、次第に芸能化したと伝わる。大みそかには境内で年明けに合わせ、4人一組で餅をつく「しんしょう搗(つ)き」などの舞いを披露。出来上がった餅は参拝者に振る舞われ、食べると一年を健康に過ごせるという。

 さらに先へ進むと、木々の間から童話に出てきそうな雰囲気の建物が見え隠れする、大きな森が現れる。緑色のフェンスに囲まれうかがい知ることが難しい場所の“正体”は、農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)。全国各地に拠点があり、ここでは主に農業機械に関する研究が行われている。通常は一般公開されていないが、事前予約で案内付きの見学が可能。

 同広報チームの中川久美子さん(44)によれば同所の総面積は18万5千平方メートル、「東京ドーム4個分」とのこと。野鳥のさえずりを聞きながら、晩秋が彩る広大で美しい景勝の地を歩く。奥には昔の農機具を展示した資料館などもある。

 自衛隊大宮駐屯地沿いの、見事に黄葉(こうよう)したイチョウ並木を通り西北方向へ。住宅地内を走る川越線の素朴で小さな単線踏切を渡る。左手の小高い丘に立つ「蕎麦茶寮 恩寵(おんちょう)」は、別荘地の山荘を思わせるしゃれた隠れ家的そば屋。浅草で修行を重ねた店主が手打ちするそばは、喉越し滑らか。元はカフェとして開業した先代こだわりのコーヒーを、そばアイスなどの甘味と共に味わうのもいい。帰りは細い坂道を上って、日進駅北口へ。

 【メモ】農研機構・農業機械研究部門見学受付係(電話048・654・7113)。蕎麦茶寮「恩寵」(電話080・4332・1548)。午前11時~午後9時。火曜定休。

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