預けたい「駅近に」 4年連続で待機児童ゼロも隠れ待機児童は1200人を超える 保育施設急増、定員割れも 0~2歳を対象とした小規模保育園で顕著/さいたま市長選・政令市の課題(4)
さいたま市長選は25日に投開票を迎える。135万人が暮らす政令市の課題を追った。
「都心方面に通うので駅の近くか、駅までの経路途中の保育園に預けたい」。4月入園の選考結果が通知された2月上旬、落選した保護者から保育コンシェルジュの40代女性に相談が寄せられる。
さいたま市は待機児童が多く生じていた2018年以降、180施設、定員1万人以上の整備を進め、22年から4年連続で待機児童ゼロを達成した。しかし、その裏で、希望する保育所に入れないなどの理由で入所を控え、待機児童にカウントされない「利用保留児童(隠れ待機児童)」の数は1268人に及ぶ。
市は各区の保育コンシェルジュらを通じて保護者と面談し、通える範囲内で空きがある施設を提案している。コンシェルジュによると、園庭や語学など設備や保育内容を重視している場合は、似ている園を提案すると前向きに検討してくれる人が多いという。ただ、需要の高い駅周辺については、「認可外を含めてもなかなか空きがなく、自宅が駅の近くだとさらに候補が限られる。『駅から離れるのは、どうしても無理です』と言われると、そこで面談が終わってしまう」と明かした。
希望する保育施設に入れない状況が続く一方、施設数の急増に伴い、定員に満たない園も。特に0~2歳を対象とした小規模保育園ではその傾向が顕著だ。そうした中で、施設側の意識も変わってきている。保育園や小規模保育園など125園超が加盟する「さいたま市保育園連絡会」の奥野敏夫会長(64)は「市の庇護(ひご)の下で公立と同じように良い意味で守られてきたが、それに安住する時代は終わった。隠れ待機児童の人に入園したいと思ってもらえるようにすることが求められている」と指摘する。
加盟園の園長から運営について相談を受けた時は、「内定辞退があったなら何のミスマッチがあったのか、考えて工夫することが大切」と伝えているという。自身の園では音楽に合わせて体を動かし表現力を養うリトミックに力を入れており、「園バスの運用も一つの手段。認可園はやれる範囲が決まっているが、必ず園の特性に合わせた差別化は見いだせるはず」と話す。
3歳になった時の預け先や環境の変化に不安を感じて避けられがちな小規模保育園だが、コンシェルジュの女性によると、見学した保護者の多くは「子どもの人数が少なく、先生との距離感も近い。アットホームな雰囲気がすごく良かった」と言ってくれるという。施設の魅力がしっかり伝わるだけでも状況は変わる。
市の予想では、利用者数がピークに達するのは30~35年ごろ。施設新設以外の解決策を模索する時が来ている。










