埼玉新聞

 

新人高野氏が接戦を制す 埼玉・松伏町長選 ネットや動画奏功 独自の選挙活動を展開した32歳が現職退ける 「町民主役の政治をしっかりつくっていく」と決意

  • 当選の報を受け支援者と万歳し喜ぶ高野祐大氏(中)=松伏町ゆめみ野の事務所

    当選の報を受け支援者と万歳し喜ぶ高野祐大氏(中)=松伏町ゆめみ野の事務所

  • 当選証書を手に写真撮影に応じる高野祐大氏=19日午後2時過ぎ、松伏町役場

    当選証書を手に写真撮影に応じる高野祐大氏=19日午後2時過ぎ、松伏町役場

  • 当選の報を受け支援者と万歳し喜ぶ高野祐大氏(中)=松伏町ゆめみ野の事務所
  • 当選証書を手に写真撮影に応じる高野祐大氏=19日午後2時過ぎ、松伏町役場

 任期満了に伴う埼玉県松伏町長選は18日、投開票され、無所属新人で元町議の会社経営高野祐大氏(32)が、いずれも無所属で、新人の農業増田等氏(70)、現職の鈴木勝氏(70)を退け初当選を果たした。高野陣営は、交流サイト(SNS)などインターネット空間で動画を流し続け、同町長選では独自の選挙活動を展開。投票率は40・58%で前回より10ポイント近く上回り、町政への有権者の関心を呼び起こしたようだ。

 当選の報を受け、高野氏は同日午後11時半過ぎ、同町ゆめみ野の民家ガレージの特設事務所であいさつ。「皆さまのおかげ。町民主役の政治をしっかりつくっていく」と決意を述べた。有効投票数9449票のうち、高野氏は3496票。現職鈴木氏との差はわずか175票だった。新人増田氏も2632票を得る混戦。高野氏は町内を三分する接戦を制した。

 高野氏は選挙期間中、近隣の有志議員と町内を宣伝カーでくまなく回った。地元支援者10数人は後方支援。駅がない同町で、町民が多く利用する越谷市内の駅で演説を繰り返した。

 選挙戦は、人口減対策や公共交通の拡充などが争点とされた。告示前日、高野氏は健康上の理由で出馬を取りやめた立候補予定者の支持も受け反現職票の受け皿に。一方で、有権者からは「若い人に変えてほしい」との声も上がっていた。若さや世代交代、変化への声なき潜在意識が底流にあったとみられる。

 高野氏に投票したという60代男性は鈴木氏と増田氏の公約や人柄を評価しながら「(2人が)悪くないのは分かっている。でも若い人の手で町を変えてほしい」と期待を寄せた。ネットや動画による有権者への影響も色濃く見られた。前回の町長選は投票しなかったという30代女性は今回、動画投稿サイト「ユーチューブ」を見て投票。「動画を見て本気度を感じた」と高野氏への支持をにじませた。

 現職の鈴木氏は保健センター移転など2期8年の実績を強調。認知度は高く、子育て世代から人気があった。2017年、当時の現職候補を破った際、いち早くSNSを活用したものの、今回は高野氏にお株を奪われた形だ。保守層の票が増田氏と分散。子育て世代や浮動票を高野氏と分け合う展開になった。

 選挙戦最終盤、後援会幹部は「若いママから鈴木と高野で迷っていると言われ、まずい流れ」と語った。鈴木氏は19日、「若者は早い変化を求めた。ユーチューブにも負けた。選挙戦略が素晴らしかった」と高野氏の健闘をたたえた。

 増田氏はバスターミナル新設など具体的な公約を打ち出し、後援会が軸となり組織戦を展開。敗因に若さとインターネットを挙げ「私の力不足。手応えは良かったが、全体像が見えなかった」と述べた。

■当選証書受け取り「責任強く感じている」

 18日に行われた松伏町長選の結果を受け、町選挙管理委員会は一夜明けた19日、同町役場で、当選した高野祐大氏に当選証書を手渡した。

 同委員会の石川幸司委員長から当選証書を受け取った高野氏は「責任を強く感じている。閉塞(へいそく)感を変えたいとの思いを受け止め、しっかり取り組んでいきたい」と抱負を述べた。

 報道陣から町政運営や周辺自治体との関係を問われ「議会、執行部との関係をしっかりつくる。小さな町なので、協力を得ながら広域連携を図りたい。町民との対話を進めていきたい」と方向性を述べた。

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