地下鉄7号線延伸、県とさいたま市が“握手” 今までと違う意思決定と喜び「市長は責任持って前に」 一方で岩槻区内に温度差、これまでの経緯に冷めた声も「本当にできるのか」「選挙のたびに出てくる」/さいたま市長選・政令市の課題(1)
さいたま市長選は25日に投開票を迎える。135万人が暮らす政令市の課題を追った。
4月21日午前9時。東武アーバンパークライン岩槻駅東口にはスクールバスを待つ目白大学の学生の長い列ができ、職員4人が誘導していた。
同大事務局によると、新年度が始まる4、5月の一部曜日に1年生の必修授業があるためで、同日は午前8時半~9時15分に路線バスも含め計10便に440人が乗車。地下鉄7号線(埼玉高速鉄道)延伸事業では大学付近に「中間駅」ができる予定で、誘導していた職員は「鉄道とバスの輸送量は比べものにならない。未来の学生のためにも早く実現させてほしい」と願う。
延伸計画は浦和美園駅から岩槻駅までの約7・2キロ。事業の構想が持ち上がったのが合併前の2000年。以降、具体的な道筋は見えず、市の政策課題として20年以上にわたる懸案とされてきた。清水勇人市長は21年6月に「23年度中に鉄道事業者への申請」を表明。しかし昨年1月、物価高騰で概算建設費が当初の1・5倍の1300億円に膨れ上がったことが原因で、事業申請が先送りとなった。
再び事態が動いたのが今年2月。市などが再検討した結果、事業費は1390億円に上昇する一方、18年から14年への工期短縮や沿線地域で鉄道利用率の高い若年層の人口推計の上振れなどから、都市鉄道等利便増進法を活用して国の補助を受ける目安の一つになるコストと利益を比べた「費用便益比」が1~1・2になる試算が示された。鍵を握る中間駅周辺のまちづくり整備では、これまで広さ45~65ヘクタール、定住人口4千人程度としていたのを最大120ヘクタール、1万人程度と見積もった。
4月には、大野元裕知事と清水市長が連名で、25年度中に鉄道事業者への事業実施要請を目指す方針を明らかにした。元大宮駅長で、さいたま市地下鉄7号線延伸認可申請事業化実現期成会の筑波伸夫会長(69)は「県と市が“握手”したのが大きい。『本気になってやるぞ』という意思決定で、今までとは違う」と喜んだ。
延伸がようやく現実味を帯びてきた一方で、事業費は別の施策に回すべきとの批判のほか、区内にも温度差があり、疑念や冷めた声も聞こえてくる。
中間駅近くに勤務する50代男性は、これまでの経緯も踏まえ「本当にできるのか。採算の仕方にもよるが、途中で止まってしまうのではという不安は消えない」と吐露。国政選挙でも公約に掲げる候補者は多く「選挙のたびに地下7が出てくることにうんざりする」との意見も少なくない。
初代岩槻区長で岩槻川通地区自治会連合会の三次宣夫会長(77)は「今回は本当に最後の決断が示された。信じてきて良かったと思っているので、市長には責任を持って前に進めてほしい」と注文した。










