埼玉新聞

 

手触り抜群と好評、人気集める手作り木工品 元保険外交員が奔走…当初は拙い品も地域ブランド品に

  • 作業所の仲間たちが作る木のおもちゃや家具、生活雑貨などの木工品を紹介する松井治子さん=東松山市西本宿の福祉作業所「あんだんて」

 東松山市西本宿にある障害者の就労支援福祉作業所「あんだんて」の代表理事として奔走する松井治子さん(72)。作業所の仲間たちが作る木のおもちゃや家具、生活雑貨などの木工品が人気を集めている。今年2月には、同市の地域ブランド品「ひがしまつやまプライド」にも認定された。

 同作業所の開設は2000年10月。前年の12月、心の病により障害を持った人たちの家族会に参加。その中で「自分たちだって怠けているわけではない」「働く場があれば働きたいよ」などとの切実な声を聞いた。間髪を入れず「働く場所をつくります」と宣言したのが松井さんだった。

 保険外交員からの転身。元旦から活動開始。古民家を借りてリフォームしながら開設準備を進めた。当初の利用者は数人。庭の畑での農作業や内職に取り組んだ。その後、古民家の修繕を頼んだ地元の大工職人の言葉がヒントになった。「(材木の)木っ端(こっぱ)でも何か(木工品が)できるよ」。それが木の切れ端や間伐材を活用、さまざまな木工品を作ることにつながっていった。松井さんは「私たちの先生は街の大工さん。スタートは『もったいない』だった」と振り返る。

 当初はノウハウもなく、拙い木工品も多かった。その後、いろんな人のアドバイスを受けながら試行錯誤、徐々に製作技術も向上していった。

 購入者はリピーターが多い。木工品の仕上げは幼児がけがをしないよう、取っ手や縁を紙ヤスリで丁寧に削って丸みを持たせている。その手触りは抜群で「ほんわかして、温かみを感じる」と好評だ。

 現在、市内外から10~50代の20人が週5日通い、木工品づくりを中心に箱や袋詰めなどの作業に取り組む。笑顔の絶えない職場。「これまで多くの人たちの協力で、コツコツと活動を重ねてきた。今後も地域の人たちと利用者が一緒につくり上げていけたらと思います」

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