埼玉新聞

 

20年以上かけた生みの苦しみ さいたま市、最後の課題…市役所移転が決定、市民には分かりにくさ残る決着

  • 市役所の位置に関する条例改正案の採決で、開票作業をする職員ら=4月29日午前1時半ごろ、さいたま市議会

 さいたま市役所の移転が4月28、29日の市議会臨時会で決定した。浦和、大宮、与野の旧3市が2001年5月に合併したさいたま市にとって最後の課題とされ、20年以上をかけての生みの苦しみだった。市庁舎移転には一部の市議から、「住民不在」「議論が拙速」と慎重な意見が根強かった。直前まで議会内で交渉が続き、市民からは分かりにくさの残る決着となった。

 清水勇人市長は昨年2月2日、市議会2月定例会の施政方針演説で、現庁舎地(浦和区常盤6丁目)から、さいたま新都心バスターミナルほか街区(大宮区北袋町1丁目)に、10年後をめどに移転を目指すと述べた。4選を目指して出馬表明したのは5日前の1月27日。市長選を意識しながらの移転表明だった。

 清水市長が4選を果たした直後、市は昨年の6月定例会で、市庁舎関連の補正予算案を提出。同年10月、基本構想の素案を発表した。コロナ禍でタウンミーティングを延期したものの、パブリックコメントを予定通り実施。移転に慎重な市議は「乱暴で急ぎ過ぎている」「スケジュールありき」と批判した。

 地元の浦和区自治会連合会が同年11月、「一切の説明や意見交換もなく進められている」として、移転計画の再検討についての要望書を市長に提出。12月定例会では、同様の趣旨の請願を提出した。

 市長側は市役所の位置に関する条例改正案の提出時期を検討したが、この時点では可決に必要な3分の2以上の同意を得られるかは難しい情勢だった。慎重派市議に対して賛成に回るように、切り崩しを図る動きもあったという。

 浦和区自治連の請願を重くみた市議会は、全5会派一致で市庁舎移転計画に関して同自治連の意向を最大限尊重することを求める決議を2月定例会で可決。同自治連は請願を取り下げ、市側は地元の一定の理解を得たとした。

 審議の中で移転先の所在地の問題が浮上した。4月28日の総合政策委員会で、「さいたま新都心にふさわしい住居表示の実施を検討すること」とする付帯決議が自民2会派の賛成で可決された。4月13日の市庁舎等整備検討特別委員会では、公明の市議が「住民に丁寧に説明しなさいと言っていた議会が、勝手にやっていいのか」と指摘した。付帯決議は移転慎重派への配慮の意味もあるとされ、複数の市議は「付帯決議に関係なく、もともと賛成する予定だった」と話している。

 一方で、多くの市議は、市庁舎移転問題が政局に変化したと指摘し、「反対で頑張ってきた人がはしごを外された」と証言する。さいたま自民を離脱した無所属市議は臨時会の反対討論で、「移転問題を政局にせず、市民を第一に考える政治をするべきだ」と述べた。別の市議は今回の可決について、「市民に説明できるのか」と疑問を呈した。

 議会内での交渉を経て4月29日未明の採決は、出席議員の8割を超える48人が賛成票を投じた。賛成した市議は「多くの市議が賛成したことは非常に大きかった。浦和のまちづくり、市の将来を思った結果ではないか」と話した。

 市は6月定例会で次の段階となる基本計画に関する補正予算案を提出し、本年度中に浦和駅周辺まちづくりビジョンを策定する方針。

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